研究課題/領域番号 |
18K09431
|
研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
伊藤 正孝 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 再生発生学, 准教授 (30534896)
|
研究分担者 |
竹内 大 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 眼科学, 教授 (40260939)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 涙腺 / マイボーム腺 / 加齢 / ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ / PPARγ / TRP channels |
研究実績の概要 |
加齢に伴うドライアイの一因としてマイボーム腺の機能低下がある。マイボーム腺上皮細胞のような脂肪を産生する細胞では、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)の活性化が細胞分化や脂肪蓄積の誘導に関与していることが報告されていることから、PPARγ の作動薬であるrosiglitazone(RSG)を用いて、培養マイボーム腺上皮細胞の増殖や脂肪産生等を調べる培養実験を実施した。その結果、RSG添加によりマイボーム腺上皮細胞の増殖は低下したものの、脂肪滴は増加することが確認され、分化促進の作用があることが示唆された(日眼誌 124(1): 7-14, 2020)。このことは、加齢に伴うマイボーム腺の機能低下に対して、PPARγ 経路の賦活化が治療戦略の一つとなり得ることを示唆している。 次に、当初の実験計画には含まれていなかったが、涙腺における温度感受性Transient Receptor Potential (TRP)チャネルに関する研究を行った。TRPチャネルは、温度のみならず多くの化学的・物理的刺激を感受するセンサーとして多様な生体機能に関わっているが、こうした温度感受性TRPチャネルのなかのいくつかは涙腺でも発現していることが報告されていることから、涙腺の加齢や抗加齢に関連するものを検索することとした。その結果、TRPM3が涙腺組織のなかで加齢とともにその発現が顕著に減少してゆくことを発見した。この因子は、マウスの涙腺発生期に発現が増加し、生後の成長とともに減少していた。また、涙腺上皮細胞と周囲の間葉細胞との共培養実験から、間葉細胞の存在下で発現が増強していることが明らかとなった(Ann Anat. 2020 Jun 5;151551)。 涙腺早期加齢モデルとしてのPD-1ノックアウトマウスの解析はほぼ終了し、投稿準備が進んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
涙腺上皮細胞においてもマイボーム腺上皮細胞においても、組織幹細胞に対する直接的なアプローチができておらず、これを賦活化させるという当初の目的を達成できていない状況である。セルソーターを用いた組織幹細胞の分取の試みも未実施のままである。 当初の実験計画には含まれていなかった、涙腺における温度感受性Transient Receptor Potential (TRP)チャネルに関する研究を実施したことによっても、他の研究項目に遅れが生じた。 加齢涙腺に生じている軽微な慢性炎症状態に関する観察はこれまでになされてきたが、これを制御することにより涙液分泌が増加するか否かに関する解析はできていない。これは適切な制御因子候補の選定ができていないことに起因する。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に課題となっていた、加齢マウスの不足が解消されてきたことから、加齢マウスの涙腺を用いら実験を再開させたい。しかしながら、セルソーターを用いた組織幹細胞分取実験は機械の整備・調整に時間を要することからこれについてはフローサイトメトリー実験に切り替えることとしたい。 涙腺早期加齢モデルとしてのPD-1ノックアウトマウスの基本的な解析がほぼ終了し投稿準備も進んでいることから、次の段階として、このマウスで見られる涙腺組織の再構築やハーダー腺化について、関与している液性因子の探索をおこなってゆきたい。 以上のような方策により、引き続き、加齢涙腺/障害涙腺にも残存しているであろう組織幹細胞の賦活化の方法を探索してゆく方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、以下の2つによる。 1)新型コロナ肺炎の流行により学会の開催が中止となり、旅費の使用がなくなったため。 2)研究の遅れにより、抗体等の試薬の購入が減ったため。
|