研究課題
当研究室で開発した改変型緑藻類ボルボックス由来チャネルロドプシン-1遺伝子(mVChR1)を視細胞変性により失明した網膜の神経節細胞に導入することで、視機能を回復できる可能性があり、現在製薬企業において臨床試験の準備段階にある。しかし、生来の視機能に比べては光感受性が低く、その原因の一つにmVChR1の発色団(オールトランス型レチナール)の供給不足が挙げられる。遺伝的盲ラットであるRCSrdy/rdyラットに基剤のみを硝子体内投与したものとmVChR1を含むウイルスを投与した網膜のレチナールの濃度を測定したところ、その濃度は同程度で、有意な差は認められなかった。一方、視機能が正常のWistarラットおよびクラミドモナス由来チャネルロドプシン2(ChR2)を恒常的に発現するトランスジェニック(ChR2-TG)ラットのレチナールの濃度はこれらより高い値を示した。ChR2-TGラットは正常ラットと同様に視細胞を有するため、高照度光照射により視細胞変性を誘発し、網膜中のレチナール濃度を測定した結果、この視細胞変性Ch2-TGラットの網膜中のレチナール濃度は、前述のRCSrdy/rdyラットと同程度となった。このことから正常視機能を持つラット網膜においては視細胞内にロドプシンを有するため、高いレチナール量であったと考えられた。前年度行ったRNA-seq解析により、mVChR1投与網膜におけるビジュアルサイクルに関与するレチナール合成に関与する酵素遺伝子および輸送タンパク遺伝子の一部の増加が確認されており、視細胞変性網膜にmVChR1を発現させることで、レチナールの合成が再活性化されていることが明らかとなったものの、本年度行ったレチナールの定量結果から、生来のレチナール量には及ばず、ビタミンAの投与により供給量を増やすことはmVChR1機能向上に寄与する可能性があると考えられた。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
European Journal of Pharmacology
巻: 883 ページ: 173193~173193
10.1016/j.ejphar.2020.173193