ミトコンドリア機能障害によってATP合成が低下すると、エネルギー産生が不十分となり、チトクロムCやapoptosis inducing factorが放出され網膜神経節細胞死が誘導される。またミトコンドリア障害による活性酸素の増加は蛋白などの変性を生じグリア活性化、グリアタンパク酸化等により網膜神経節細胞への神経栄養因子のサポートが減少すると、網膜神経節細胞死が生じると考えられる。 酸化ストレスに脆弱なNrf2 KOマウスはComplex I阻害剤・ロテノンによるミトコンドリア障害時、網膜ミュラー細胞が活性化することを明らかにした。そこで昨年度は酸化ストレス暴露時のミュラー細胞への神経栄養因子の影響を探索するため、生後5-8日の野生型 (WT)とNrf2 KOマウスからミュラー細胞を初代培養し、ロテノン (0、3、10、30、100 uM)投与下の細胞生存率と酸化ストレスを調べた。ロテノン30uM下の神経栄養因子 (BDNF、bFGF、NGF)の遺伝子発現を時間毎にリアルタイムPCRで検討した。結果は全てのロテノン濃度でNrf2 KOマウスのミュラー細胞はWTと比較し細胞生存率は有意に低く(p < 0.05)、ロテノン30、100uM下で酸化ストレスは有意な増加を認めた(p < 0.05)。リアルタイムPCRではNrf2 KOのミュラー細胞は、WTと比較し6、24時間において神経栄養因子(BDNF、bFGF、NGF) の有意な発現上昇を認めた (p < 0.05)。 以上より、Nrf2 KOマウスのミュラー細胞では酸化ストレス増加により神経栄養因子が発現し、神経保護に働くことが示唆された。
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