研究実績の概要 |
視野狭窄患者の自動車運転能力を評価するために、視野狭窄をきたす代表疾患である緑内障患者を対象として、アイトラッキング搭載ドライビングシミュレータ(ETDS)を施行している。が、しかし、高齢視野狭窄患者では、視野障害に加えて認知機能や運動能力の低下も加わり、必ずしも視野障害だけが原因で事故が起こるとは限らない。2020年度は、ETDS事故と視野障害の一致・不一致に注目して検討した。 視野狭窄患者57名(平均年齢62.8±14.0歳)を対象とした。視力検査、Humphrey中心24-2プログラム(HFA24-2)、エスターマン視野検査、認知機能検査Mini-Mental State Examination(MMSE)、ETDSを施行した。ETDS時の視線の動きは、据え置き型眼球運動計測装置(Tobii Pro X3-120)にて測定し、左右からの飛び出しなど全15場面での事故の有無を記録した。HFA24-2より両眼重ね合わせ視野(integrated visual field; IVF)を作成し、若年群(50才未満, 11名)、中年群(50才~70才未満, 22名)、高齢群(70才以上, 24名)の3群に分けてETDS事故と視野障害が一致しているかを検討した。 その結果、若年、中年、高齢群では、視力、HFA24-2のMean Deviation値に有意差がないものの、高齢群ほどMMSEが低下していた(P=0.042, Kruskal-Wallis検定)。ETDS事故と視野障害の不一致率は、若年群では9.1±30.2%、中年群では12.5±32.5%、高齢群では37.9±45.1%と高齢になるほど増加していた(P=0.026, 同検定)。 70才以上の高齢視野障害患者は、視野障害と一致しない事故が増えるので、運転評価にあたっては注意が必要であることが分かった。
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