研究実績の概要 |
視野障害患者107名(平均年齢62.8±13.8歳)を対象として、アイトラッカー搭載ドライビングシミュレータ(DS)を施行し、DS事故と関連する因子について検討した。 全例に対して運転調査(運転時間、過去5年間の事故歴の有無、運転時の自覚症状の有無)、視力検査、Humphrey中心24-2プログラム(HFA24-2)、エスターマン視野検査、認知機能検査Mini-Mental State Examination(MMSE)、DSを施行した。HFA24-2より両眼重ね合わせ視野(IVF)を作成し、IVF上下半視野の平均網膜感度を求めた。DS時の視線の動きは、据え置き型眼球運動計測装置(Tobii Pro X3-120)にて測定し、5分間の走行中の運転時の目の動きの大小を示す、視線位置水平方向の標準偏差(視線水平SD)と視線位置垂直方向の標準偏差(視線垂直SD)、全15場面での事故の有無を記録し、DS事故に関与する因子を検討した。 その結果、DS事故件数は、年齢(r=0.56, P<0.0001)、MMSEスコア(r=-0.27, P=0.007)、視野良好眼のMD(r=-0.25, P=0.010), エスターマンスコア(r=-0.27, P=0.005)、IVF上方平均網膜感度(r=-0.28, P=0.003)、IVF下方平均網膜感度(r=-0.38, P<0.0001)、視線水平SD(r=-0.39, P<0.0001)と有意な相関があった。DS事故件数を応答変数とした重回帰分析では、年齢(P=0.0001), 視線水平SD(P=0.0308), betterMD(P=0.0063)が有意な関連を認めた。 年齢が高く、視野良好眼の視野が悪く、目の動きの少ない視野障害患者は、事故のリスクが高いため、安全運転の指導にあたっては注意が必要である。
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