本研究の目的は、アクアポリンの房水産生における役割を、アクアポリン4阻害剤投与マウスの生理学的変化を解析することで解明することである。昨年度はハンドリングを十分行うことによる無麻酔下のマウスの眼圧測定を行なった。今年度は無麻酔下にDBA2Jマウスの眼圧をicare TONOLABにより薬剤投与前から薬剤投与30分毎に120分後まで測定した。対照群としてのドルゾラミド投与群では統計学的有意に眼圧下降効果がみられたが、アクアポリン4阻害剤投与群では統計学的有意な眼圧下降効果はみられなかった。 一方、昨年度に並列的に行なった、post-iridial flowと呼ばれる硝子体を経由し網膜に至る房水の経路におけるアクアポリン4の役割を明らかにすることを目的とする研究を今年度はさらに推し進めた。アクアポリン4ノックアウトマウスおよびコントロールマウスに大腿静脈から注入したH217Oによる信号変化を観察する手法であるJJ vicinal coupling proton exchange magnetic resonance imaging (JJVCPE MRI)を行った。硝子体の信号変化はコントロールマウス群に比べてアクアポリン4ノックアウトマウス群で統計学的有意に大きかった。この結果から、マウスの大腿静脈に注入されたH217Oは房水となり硝子体に流入し、アクアポリン4ノックアウトマウスでは網膜のミュラー細胞のアクアポリン4を介した硝子体から網膜内への水の流入が停滞している可能性が示唆された。本研究で示唆されたアクアポリン4を介した網膜内への水の流入は脳内にあるglymphatic flowと呼ばれるシステムが網膜内にも存在する可能性を示す。
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