研究課題/領域番号 |
18K09447
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 誠 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80273788)
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研究分担者 |
三木 明子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10726988)
松宮 亘 神戸大学, 医学研究科, 助教 (30707120)
楠原 仙太郎 神戸大学, 医学研究科, 講師 (40437463)
栗本 拓治 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (50388815)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アクアポリン / 網膜神経節細胞 / 視神経挫滅 / 緑内障 / 外傷性視神経症 / 乳酸 |
研究実績の概要 |
アクアポリン9(Aqp9)ノックアウト(KO)マウスと野生型(WT)マウスを用いて、視神経挫滅モデル(ONC)における、網膜神経節細胞(RGC)の生存率と暗所視閾値電位(STR)で評価する機能障害を比較すると同時に、エネルギー基質である乳酸の輸送体monocarboxylate transporter (MCT)1,2,4の網膜での発現変化を検証した。Aqp9 KOマウスはWTに比べて、TUBB3免疫染色ないしFluorogoldの上丘投与による逆行性染色のいずれにおいても、ONC1週後に有意にRGC死が増加した。また陽性STRは前者で有意に低下した。 AQP9抗体で免疫沈降後、MCT1, 2, 4抗体でWestern blottingを行うと、WT網膜で、MCTのいずれのアイソフォームもAQP9で共発現していた。ONC後、AQP9の発現は低下したが、MCT2の共発現の程度は変わらなかった。一方で、MCT1,4のAQP9との共発現は見られなくなった。網膜内の乳酸濃度はONC後有意に減少した。 RGCはエネルギー基質として乳酸を利用している可能性がさらに確かめられた。その輸送にはMCTに加えてAQP9が重要な役割を果たしており、AQP9発現を抑制すると、MCTファミリーとの協調性が失われ、乳酸輸送が障害され、RGC死が増加する可能性が示唆された。今回の研究結果は、外傷性視神経症や緑内障性視神経症といった視神経疾患におけるRGC死のメカニズムの一部を明らかにしたものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究結果はすでに英文学術誌に投稿している。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、査読が停滞している。査読が進めば、追加実験が必要であれば、それに対応する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で乳酸輸送が網膜神経節細胞の生存と機能維持に不可欠であることが示唆される。とりわけ視神経挫滅モデルで実証できたことは、今後、未だ治療法のない、外傷性視神経症や虚血性視神経症といった急性視神経障害の治療法の開発に応用できると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿した海外学術誌が掲載された際の掲載料を見込んで残していたが、新型コロナウイルスパンデミックで査読が遅れて、結果、掲載に至っていないため、次年度氏使用することとした。
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