研究実績の概要 |
アクアポリン(aqp)9ノックアウト(KO)マウスと野生型(WT)マウスに視神経挫滅を与え、一週後の網膜AQP9、monocarboxylate transporter(MCT)1,2,4発現変化、網膜神経節細胞(RGC)数、網膜内グルコース・乳酸濃度を、暗所視閾値電位(STR)変化を調べた。正常では、MCT1,2,4はAQP9と免疫沈降し、共発現していた。視神経挫滅により、WT網膜のAQP9発現が低下し、AQP9とMCT1,4の共発現が消失した。aqp9 KOマウスの方がWTよりも単位面積当たりRGC細胞数ならびにSTRは有意に減少した。MCT2阻害薬、4-CINの硝子体投与により、視神経挫滅によるRGC細胞密度減少ならびにSTR減少がAQP9KOマウスのそれと同程度となった。また網膜内乳酸濃度は、aqp9 KOマウスならびに4-CIN投与WTマウスで有意に無処置WTマウスより減少し、網膜内グルコース濃度はaqp9 KOマウスでは視神経挫滅の有無にかかわらずWTより有意に増加した。GLUT1発現はaqp9 KOマウスで、GLUT3発現は視神経挫滅網膜で有意に増加した。免疫染色でAQP9はWTのRGCとastrocyteに発現しており、aqp9 KOマウスではその発現は著明に減弱していた。またMCT1,2,4免疫染色性は神経節細胞層のAQP9発現細胞と共局在を示した。 以上の結果から、乳酸はAQP9ならびにMCTによりアストロサイトRGC間で輸送され、RGC生存と機能維持に重要な役割を果たしており、RGCはグルコースよりも乳酸をエネルギー基質として選好しており、ストレス下で、その利用環境が変わるとグルコースを代用利用する可能性が示された。AQP9がMCTと協調してRGCのエネルギー基質として乳酸輸送に携わっていることを初めて証明したと考える。
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