低出生体重(SGA)ラットを用いて未熟児網膜症(OIR)モデルを作製して、IGF-1の投与が網膜症に与える影響を検討した。 SGAラットを作製するため妊娠SDラットに妊娠13日目からカロリーは同等の普通食(Cnt-rat)もしくは低たんぱく食(SGA-rat)を与えて飼育した。酸素負荷は仔ラットの生直後から50%O2/24h、その後10%O2/24hを1サイクルとして7サイクル行い、日齢14~18までは大気中で飼育した。 日齢18に仔ラットの体重を測定して採血した後、摘出した右眼から網膜展開標本を作製して網膜症重症度(CH)の評価と網膜全面積に対する無血管領域の割合(%AVA)を計測した。左眼からは網膜を摘出して網膜内VEGF及びIGF-1濃度を、血清からはIGF-1濃度をELISA法で測定した。その結果SGA-ratは生後から日齢18までCnt-ratより有意に体重が少なく、日齢18においてSGA-ratの血清IGF-1濃度は有意に低値だったが、CH、%AVA、網膜IGF-1、網膜VEGFには有意差がなかった。 次に、IGF-1を投与してSGA-ratの網膜症への影響を検討した。日齢4~14の間IGF-1(2ug/g体重)を1日1回皮下投与し(SGA-IGF1-rat)、日齢14と18における評価項目(CH、%AVA、網膜IGF-1、網膜VEGF、血清IGF-1)(CHは日齢18のみ)を、PBSを投与した群(SGA-PBS-rat)と比較した。その結果SGA-IGF1-ratはSGA-PBS-ratと比較して、日齢14の網膜内VEGF濃度が有意に高値、日齢18のCHが有意に高スコアであった。 以上の結果からSGA-ratでは、生直後のIGF-1が低値であることが網膜症の悪化には寄与せず、むしろIGF-1の投与によって網膜症が悪化することが明らかになった。
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