研究課題/領域番号 |
18K09460
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
三浦 雅博 東京医科大学, 医学部, 教授 (60199958)
|
研究分担者 |
安野 嘉晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10344871)
カサラゴッド デイーパカマス 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (40773908) [辞退]
上野 勇太 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90759317)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 光干渉断層計 / メラニン / 網膜色紙上皮 / 脈絡膜 / 偏光解消性 / 黄斑疾患 |
研究実績の概要 |
本研究の主要課題のうち「網膜色素上皮異常の3次元解析」について大きな進展があった。偏光感受型光干渉断層計(OCT)を使えば、網脈絡膜内のメラニン3次元分布を解析できることは報告されてきた。しかしメラニンは網膜色素上皮細胞と脈絡膜メラノサイトの両方に分布しているため、網膜色素上皮細胞と脈絡膜メラノサイトの病態を個別に検討することは困難であった。そこで2018年に、多機能OCTで得られる他の情報(強度画像情報、血流情報)と偏光感受型OCTの情報を組み合わせることにより、脈絡膜メラニンと網膜色素上皮メラニンを自動判別する手法を確立した(Azuma (Miura, Yasuno): Biomed Opt Express 9,2955-2973,2018)。この手法で得られた網膜色素上皮細胞メラニン3次元分布は網膜近赤外自家蛍光画像に類似する事が確認された。この自動判別を用いて、Vokt-小柳-原田病における網膜色素上皮細胞層におけるメラニン変化を長期観察した (Miura (Yasuno)Invest Ophthalmol Vis Sci. 60,3352-3362,2019).従来、Vogt-小柳-原田病では自家蛍光画像において過蛍光病巣が観察されることが報告されてきた。しかし自家蛍光画像からは平面情報しか得られないため、原因組織の特定については推測の域をでなかった。そこで多機能OCTのデータから網膜色素上皮(RPE)メラニンの3次元分布画像を算出し、近赤外自家蛍光画像の3次元解析を行った。この結果、過蛍光病巣はRPE層におけるメラニン貪食炎症細胞の集積に由来することが判った。また4年間の長期観察から、細胞集積は徐々に減少することも判った。この研究で用いた手法は、黄斑疾患の診断治療に革新的な変化をもたらすことが期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における重要課題である、脈絡膜メラニンと網膜色素上皮メラニンの自動判別に成功し英文誌に成果が発表された(Biomed Opt Express)。また加齢黄斑変性とVokt-小柳-原田病に対する臨床応用に成功した。臨床応用に関する研究については英文誌に2本掲載された(Sci Rep, Invest Ophthalmol Vis Sci)。さらに多機能OCTの小型化および安定性向上に関する研究が英文誌に2本掲載された(Biomed Opt Express)。これらの研究成果により、多機能OCTによる自家蛍光画像の3次元解析が可能となった。これは多機能OCTの臨床実用化に向けた大きな進展である。この技術を基にして、既に600眼以上の計測を実施しており、さらなる臨床解析を進めている。さらに正常眼計測および脈絡膜メラニン3次元解析の準備も順調に進んでおり、2020年度中の成果発表を目指している。
|
今後の研究の推進方策 |
多機能OCTによる疾患眼および正常眼の計測を進め、計測データに関する詳細な解析を進める。これにより下記の課題について検討を進める。 1、加齢黄斑変性における、網膜色素上皮細胞の網膜内遊走について臨床研究を実施する。具体的には網膜色素上皮剥離の3次元構造解析と網膜内遊走の定量解析を組み合わせて、網膜内遊走に関連する病態生理を検討する。この研究の成果は、2020年度の上半期には英文誌投稿および国際学会投稿を予定する。 2、脈絡膜メラニン密度の3次元分布解析手法を確立させる。また強度画像の判別技術(segmentation)を組み入れることにより解析の自動化を達成させる。臨床応用として、Vokt-小柳-原田病における夕焼状眼底発症の定量化を実施する。さらに黄斑疾患の遼眼を対象に、脈絡膜の肥厚 (Pachychoroid)や脈絡膜の菲薄化と脈絡膜メラニン密度との関係を検討する。さらに正常眼を対象として、加齢変化、性差、左右差、脈絡膜厚との関連、人種差、個体間差について解析する。これを基に正常人データベースの構築を目指す。 3、病変検出の自動化のために、病態ごとに、最適なフィルターや信号閾値設定を検討し、解析の半自動化を目指す。また対象眼数を増やして解析手法を改良する事により、解析方法の信頼性を向上させる。さらに3次元構造を数値化する手法を開発し、臨床応用に向けたパラメーターの構築を行う。また診断技術、治療効果判定への応用を実施し、臨床応用を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度ではコンピュータ関連消耗品(ハードディスクドライブ、USBディスク、等)の購入額が予想より少なく、161672円が未使用となった。令和2年度は、多機能Jones matrix OCTによる画像解析を実施するためのソフトLabViewのライセンス更新料として422,820円が必要となる。コンピュータ関連消耗品の費用として約16万円が必要となる。さらに論文執筆および投稿掲載に関する費用が約3万円必要となる。
|