研究実績の概要 |
本研究の主要課題のうち「網膜色素上皮異常の3次元解析」について大きな進展があった。2018年度に開発した、脈絡膜メラニンと網膜色素上皮メラニンの自動判別技術(Azuma (Miura, Yasuno): Biomed Opt Express 9,2955,2018)を用いて、「網膜色素上皮異常の3次元解析」に関する臨床研究を実施した。まず初期段階として2019年度に、Vokt-小柳-原田病における網膜色素上皮層メラニン変化(Miura (Yasuno)Invest Ophthalmol Vis Sci. 60,3352,2019)、さらに漿液性網膜色素上皮剥離における網膜色素上皮障害(Miura (Yasuno) Sci Rep 9,3278,2019)について報告した。2020年度は、これらの研究を発展させ、「網膜自家蛍光画像の3次元解析」を報告した(Miura (Yasuno) Sci Rep 11,2764,2021)。網膜自家蛍光画像は網膜色素上皮異常を検出する画像解析手法として、眼科臨床現場で広く使われている。しかし平面情報しか得られないため、網膜色素上皮構築の3次元解析が不可能という弱点があった。我々の開発した「網膜色素上皮異常の3次元解析」を用いて、網膜色素上皮3次元変化を平面マッピングすることにより近赤外自家蛍光に類似した画像を算出することが可能となる(RPE-melanin thickness map)。このRPE-melanin thickness mapと網膜自家蛍光画像を比較することにより、「網膜自家蛍光画像の3次元解析」を実施した。加齢黄斑変性に併発した漿液性網膜色素上皮剥離26眼における、過蛍光病変を定量化し、3次元分布を解析した。その結果、網膜色素上皮細胞変化は剥離の頂点領域よりも斜面領域に好発し、斜面が急傾斜なほど範囲が広くなることが判った。この研究は、マルチコントラストOCTによる自家蛍光画像3次元解析の臨床応用の可能性を実証するものであり、網膜臨床画像解析に革新的変化をもたらす可能性がある。
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