研究課題
申請者らはこれまでにフックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)患者ではTGF-βシグナルが活性化しており、TGF-βによる刺激により、患者より樹立した疾患モデル細胞においては生体と同様にECMの過剰産生、および小胞体ストレスを介した細胞死が誘導されることを報告している。また、FECD患者の角膜内皮におけるTCF4の発現レベルが約2倍に亢進していることを明らかにした。これらの背景を踏まえて、今年度はFECD患者より樹立した角膜内皮細胞をFECD病態モデル細胞として、TCF4の亢進がTGF-βシグナルの活性化および細胞障害に至る経路に与える影響を評価した。具体的には、CRISPR/Cas9によりTCF4のノックアウトを行い、シングルセルから培養してTCF4-/-細胞株を作製した。作製したTCF4-/-細胞株において、TGF-βによる刺激により、上皮間葉系移行に関連遺伝子の発現、ECMの産生レベル、変性タンパク質の蓄積が全て抑えられ、結果的に小胞体ストレス、アポトーシス経路の活性化が抑制されることを明らかにした。これらの結果は、FECD患者におけるTCF4の亢進が病態を生じる原因となっていることを示すものであった。TCF4のFECDにおける発現レベルの亢進の原因を検証するために、正常者由来の角膜内皮細胞の第3イントロンに100回のCTG反復配列をCRISPR/Cas9を用いてノックインし、TCF4の発現レベルへの影響を検討する予定であったが、繰り返し配列のノックインは不安定であったために、FECD患者の伸長する繰り返し配列をCRISPR/Cas9を用いて取り除くことを試み成功した。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに進行していると考えている。
TCF4のFECDにおける発現レベルの亢進の原因として、1) CTG反復配列の伸長がTCF4の高発現の直接的原因となり病態を引き起こしている、2) CTG反復配列により機能不全のTCF4が産生されるため病態が生じ、フィードバックとしてTCF4の発現が亢進している、3) 未知の遺伝的背景により二次的にTCF4が高発現している、という3つの可能性を想定している。FECD患者由来の角膜内皮細胞における第3イントロンよりCTG伸長反復配列をCRISPR/Cas9により取り除きTCF4の発現レベルへの影響を検討する。また、CTG反復配列のノックイン細胞における、上皮間葉系移行に関連遺伝子の発現、ECMの産生レベル、変性タンパク質の蓄積、小胞体ストレス、アポトーシス経路の活性化について解析する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (41件) (うち国際学会 10件、 招待講演 5件)
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