研究課題
角膜内皮は角膜を透明に保つために不可欠な組織であるが障害されると角膜は白濁し、重症の視力障害の原因となる。フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)は約4%が罹患し(40歳以上、欧米人)、1) 角膜内皮細胞の障害角膜内皮と2) 基底膜への過剰な細胞外マトリックス(ECM; extracellular matrix)の沈着を臨床的な特徴とする、両眼性、進行性の遺伝性疾患である。申請者らはこれまでにFECD患者ではTGF-βシグナルが活性化しており、TGF-βシグナルの活性化により、ECMの過剰産生、および小胞体ストレスを介した細胞死が誘導されることを報告している。また、FECD患者の角膜内皮におけるTCF4の発現レベルが約2倍に亢進していることを明らかにした。これらの背景を踏まえて、今年度は昨年度に引き続きFECD患者より樹立した角膜内皮細胞をFECD病態モデル細胞として、TCF4の亢進がTGF-βシグナルの活性化および細胞障害に至る経路に与える影響を評価した。CRISPR/Cas9によりTCF4のノックアウトを行い、シングルセルから培養してTCF4-/-細胞株を作製しTCF4の病態への影響を評価した。さらに、FECD患者由来の角膜内皮細胞において伸長する繰り返し配列をCRISPR/Cas9を用いて取り除き、FECDの病態に対する影響、および様々な細胞現象への影響を網羅的に評価した。さらに、2019年度はトランスクリプトーム解析を行い、CTG反復配列の伸長または、FECD患者由来細胞におけるTCF4の欠失が角膜内皮細胞に与える影響を評価した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに研究が進んでいる。
TCF4のFECDにおける発現レベルの亢進の原因として、1) CTG反復配列の伸長がTCF4の高発現の直接的原因となり病態を引き起こしている、2) CTG反復配列により機能不全のTCF4が産生されるため病態が生じ、フィードバックとしてTCF4の発現が亢進している、3) 未知の遺伝的背景により二次的にTCF4が高発現している、という3つの可能性を想定している。そこで CTG反復配列の伸長または、FECD患者由来細胞におけるTCF4の欠失が角膜内皮細胞における様々な現象にどのような影響を与えるかをトランスクリプトーム解析を行い検討してる。2020年度はトランスクリプトーム解析をさらに進め、得られた影響を受ける候補の現象について細胞モデルを用いてin vitroでさらなるメカニズムの解明を進める。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件、 招待講演 3件) 図書 (5件)
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