研究課題
網膜硝子体悪性リンパ腫(VRL)の組織型はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma: DLBCL)が大多数を占め、生命予後不良な疾患である。IOLでは硝子体中に腫瘍細胞だけでなく、Tリンパ球などの炎症細胞浸潤がみられる。近年、腫瘍細胞とともに浸潤したTリンパ球や間質細胞などが形成する腫瘍微小環境が病態形成に重要であると報告されている1)。腫瘍微小環境においてTリンパ球は細胞障害性T細胞として抗腫瘍免疫に作用するだけでなく、免疫抑制性の制御性T細胞として抗腫瘍免疫を抑制することで、腫瘍細胞増殖を促し、病態悪化に作用する報告もある。また、IL-10、IL-35などの制御性サイトカインが制御性T細胞の分化や増殖を促進し抗腫瘍免疫抑制に作用することも報告されてきている。IOLにおいてこれら制御性サイトカインの病態への関与については未だ明らかにされていない。今回、我々はVRL、内因性ぶどう膜炎、コントロール(黄斑前膜)患者由来硝子体液中のIL-35などの制御性サイトカインやIL-10関連サイトカインを網羅的に測定し、IOLの臨床像との関連を調べた。IL-35はVRL群と、内因性ぶどう膜炎(EU群)で硝子体液中の濃度が有意に高かった。また、VRL群のなかでも眼原発例において、硝子体液中IL-35濃度が高い群では硝子体液中IL-35濃度が低い群と比し、有意に生命予後が悪かった。5年生存率はそれぞれ40.0%と83.3%であった。B細胞型VRLにおいて、硝子体液中IL-35の濃度が生命予後を予測するマーカーとなる可能性が示唆された。現在投稿中である。
3: やや遅れている
2020年4月1日より勤務先が国立病院機構九州医療センターから九州大学大学院医学研究院眼科に異動することになった。そのため、研究環境を移行するのに数か月の時間を要した。さらに異動した先の九州大学大学院医学研究院眼科では九州大学総長からの要請で新型コロナウイルス感染症により、九州大学より研究活動の停止要請を受けた。研究活動の停止要請を受け、本研究活動を停止している。そのため、本研究活動に遅延が生じている。
以下の実験を予定している。(1)NmUによる眼局所の炎症制御機構の解明(in vitro)1.野生型(WT)マウス由来およびのNmUR1、NmUR2遺伝子欠損マウス由来の網膜色素上皮細胞(RPE)を用いて、NmUの刺激によるα-SMA発現の変化について免疫染色法で調べる。2.NmUによるRPEのEMTの抑制が、抑制性サイトカインIL-10などの液性因子を介した間接的なものかを調べる。NmU刺激後のRPEによる抑制性サイトカインIL-10やTGF-βの産生上昇をELISA法で調べる。3.RPEのNmUR1、NmUR2遺伝子欠損マウス由来のRPE用いて、2.の実験を行い, RPEのNmUR1、あるいはNmUR2のどちらの受容体を介してIL-10やTGF-βの産生上昇手術的にいるかをELISA法で調べる。(2)実験的脈絡膜新生血管(CNV)モデルを用いた解析(in vivo)1.野生型マウスの腹腔内にNmUまたは基剤投与した後、CNVを誘導し、ILC2(Lin陰性、IL-7Rα陽性、GATA3陽性)、マクロファージ(CD11b陽性細胞)などの炎症細胞浸潤の経時変化についてフローサイトメトリーを用いて調べる。2.野生型マウスにCNVを誘導した後、眼内にNmUまたは基剤を投与し、ILC2、マクロファージなどの炎症細胞浸潤の経時変化についてフローサイトメトリーを用いて調べる。3.NmU KOと対照マウスにCNVを誘導した後、眼局所におけるα-SMA、vimentin、SnailなどのEMT関連因子をreal-time PCR法で比較する。
勤務先の出張旅費により、学会出張旅費を賄うことができた。勤務先の異動により、研究費使用を差し控えたため。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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