研究課題/領域番号 |
18K09472
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
舟山 恵美 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (10533630)
|
研究分担者 |
山本 有平 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70271674)
林 利彦 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (00432146)
村尾 尚規 北海道大学, 大学病院, 講師 (90706558)
大澤 昌之 北海道大学, 大学病院, 助教 (70625029)
前田 拓 北海道大学, 医学研究院, 助教 (80813542)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 脂肪移植 / 間葉系幹細胞 / 羊膜 / 血管増生 / 線維化 |
研究実績の概要 |
脂肪移植術において、脂肪由来間葉系幹細胞を添加した脂肪では移植脂肪の生着率が向上することが知られている。しかし、脂肪以外を由来とする間葉系幹細胞が脂肪移植術に与える影響についての報告はほとんどない。我々は、羊膜由来間葉系幹細胞(Amnion-derived mesenchymal stem cell: AMSC)に着目し、羊膜由来間葉系幹細胞による移植脂肪の生着率向上効果についての検証を研究目的とする。また、放射線照射を行った母床に対しても、羊膜由来間葉系幹細胞の移植脂肪の生着向上効果を検証する。これまでに、羊膜由来間葉系幹細胞の採取、培養方法について検討を行い、移植脂肪に添加する羊膜由来間葉系幹細胞の調整が可能であることを確認した。マウス鼠径部のfat padを摘出、細分化し移植脂肪とする同種移植モデルでの評価を予定していたが、予備実験で十分量の脂肪の採取が困難であることが確認されたため、手術時の余剰検体として生じたヒト脂肪を免疫不全マウスの背部に移植する異種移植モデルにて検討を行うこととした。 移植脂肪の体積、重量を経時的に計測し、羊膜由来間葉系幹細胞添加群で、体積、重量が上回る傾向を認めた。また、移植脂肪内の血管増生に関して、CD31による免疫染色にて評価を行ったが、現時点では血管増生の傾向は明らかではない。また、Elastica-Masson染色にて線維化の評価を行なったところ、羊膜由来間葉系幹細胞の添加により線維化が抑制される可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
移植脂肪の体積、重量に関して、羊膜由来間葉系幹細胞の添加による生着向上効果は示されたが、その機序として第一に考えていた血管増生に関しては、CD31染色による免疫染色においては有意な結果が現在のところ得られていない。間葉系幹細胞は、血管増生以外にも、免疫調整・抗線維化・抗アポトーシス作用などの様々なパラクライン作用を有していることが知られている。それらを加味して、血管増生以外の機序が移植脂肪生着率向上に影響を与えている可能性について解明するため、現在、免疫染色での検討を追加している。また並行して、関連する遺伝子発現に関して、リアルタイムPCRなどの手法を用いて検討を追加している。 本来であれば、本年までに生着向上効果の証明およびその機序の解明を行なった後に、放射線照射を行なった母床での移植脂肪生着向上効果について検討する予定であったことから、現状では当初の計画よりはやや遅れている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
前述の通り、羊膜由来間葉系幹細胞の添加による移植脂肪の生着向上効果の機序について、免疫染色、遺伝子発現について検討を継続する。特に、血管増生以外の、免疫調整・抗線維化・抗アポトーシス作用といった各種パラクライン作用に着目して検討を行う。 また並行して、放射線照射を行った母床に対しても羊膜由来間葉系幹細胞による移植脂肪の生着率向上効果を検証する。脂肪移植部位が当初の予定と異なり、大腿から背部へ変更となったため、放射線照射時の保定・照射方法などについても検討が必要である。放射線照射群に対しても、移植脂肪の体積、重量について経時的に測定を行う。また、血管増生を含めた、免疫調整・抗線維化・抗アポトーシス作用などの機序について免疫染色、遺伝子発現の評価を行う予定である。
|