研究課題
糖尿病性足壊疽の難治性はよく知られており、好中球の機能不全がその要因の一つとされているが、詳細なメカニズムは不明であり、好中球に対する治療法もみられない。皮膚創傷治癒において、好中球は最も早く創部に集積し、初期の感染防御・炎症反応誘導に重要な役割を担う。その一方、炎症が過剰な糖尿病性足壊疽では、遷延した好中球がネトーシス(NETosis)に陥り、治癒の阻害に働くことが長年指摘されている。しかし、創部におけるNETosis誘導機序は明らかになっていない。そこで今年度は、活性化した好中球にみられる特殊な細胞死「ネトーシス(NETosis)」の誘導機序を中心に解析を行った。これまでに我々は、真菌の構成成分の一つであり、C型レクチン受容体の一つであるデクチン(Dectin)-2のリガンドであるα-マンナンを創部に投与すると、大量の好中球遷延を伴い創傷治癒が遅延することを明らかにしている。Dectin-2は好中球やマクロファージの細胞表面に発現することも確認している。本年度の解析により、Dectin-2がNETosis誘導に関わることを突き止めた。さらに、NETosis構成因子の一つである好中球エラスターゼを阻害することにより、遅延していた治癒が回復することを確認した。これらはDectin-2依存的な反応であった。現在、糖尿病性足壊疽の治療において、好中球をターゲットとした治療法は開発されていないが、本年度の解析によりDectin-2阻害や好中球エラスターゼ阻害が有効である可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
糖尿病性足壊疽の難治化要因として、好中球機能不全、今年度は特に好中球にみられる特殊な細胞死「ネトーシス(NETosis)」の誘導機序に注目して解析を行い、下記の点を明らかにしたため。1. C型レクチン受容体の一つであるデクチン(Dectin)-2がNETosis誘導に関わる。2. NETosis構成因子の一つである好中球エラスターゼを阻害することにより、遅延していた治癒が回復する。
今後はDectin-2を介したNETosisが糖尿病下で増強するのか、また実際に治癒を阻害するのか、好中球が主因か(すなわち好中球除去によりこの現象がキャンセルされるのか否かを好中球を選択的に除去する抗Ly6G抗体を用いて検証する)について解析を行い、より詳細なメカニズムに迫る。
次年度使用額には、今年度の研究を効率的に進めたことに伴い発生した未使用額であり、平成31年度請求額と合わせ、平成31年度の研究遂行に使用する予定である。
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J Invest Dermatol
巻: 139(3) ページ: 702-711
10.1016/j.jid.2018.10.015.