研究課題/領域番号 |
18K09476
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
森 弘樹 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80345305)
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研究分担者 |
植村 法子 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (10568017)
田中 顕太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20569503)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 角化細胞 / 神経細胞 / 振盪刺激 / ミッドカイン / TRPV4 |
研究実績の概要 |
さする刺激により神経の伸長が促される際のTransient Receptor Potential(TRP)の作用機序を解明するため、今回の研究においては”さする”刺激を皮膚細胞が感知しATPやミッドカインを介して神経細胞に伝達するモデルを想定し、そのモデルに基づいて検証を行った。モデル内の神経皮膚細胞間の伝達物質として、ミッドカイン(MK)・およびATPを想定した。 今回は実験計画書における【研究2:伸展培養もしくは振盪機を用いた物理的刺激による各種因子の検討】を施行した。具体的にはリシン、ラミニンコーティング施行した24wellプレート上で、ラット由来神経細胞、ヒト由来ケラチノサイトの共培養を行った。ラット由来神経細胞はラット後根神経節細胞を使用した。ヒト由来ケラチノサイトは当院の倫理委員会の承認および患者の同意を得て、多指症患者の余剰指の皮膚から得た細胞を4-5継代したものを使用した。神経細胞を安定培養ののち続いて皮膚ケラチノサイトを共培養しタイテック社セルシェーカーCS-LRにて4日間継続的に振盪(150回/分)し、1-3日間に培養液を採取した(1,2日目各群n=2、3日目各群n=4)。さらに3日目にTRPV4による免疫染色を行った。TRPV4は皮膚細胞および神経細胞両方で陽性であったが、振盪群においては皮膚細胞により強く認められた。また、振盪群においてはwellの中央部に皮膚ケラチノサイトの一部剥脱が認められた。MKの培地内の濃度は振盪3日目において非振盪群が振盪群より有意に高かった。 以上の結果から振盪刺激により皮膚細胞のTRPV4の発現が促進される可能性が示唆された。またモデル内で想定した神経皮膚細胞間の伝達物質のうち、MKの分泌は振盪により有意に減少することが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初神経細胞およびケラチノサイトの共培養においてストレッチチャンバーでの培養を計画していたが、予備実験の段階でコーティング後シリコン素材のストレッチチャンバーからコーティング剤および細胞の剥脱が認められ実験を中断した。 実験計画書においてがストレッチチャンバーでの培養が難しい場合上記のような振盪刺激による培養に切り替えることを計画していたため、その通り施行した。
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今後の研究の推進方策 |
今回施行した【研究2】において若干の改良を要する点があると思われた。皮膚神経細胞の共培養において振盪によるミッドカイン(MK)分泌の減少が認められたが、振盪による剥脱であるのか検討を要する。細胞数あたりのMK量を測定することを要すると思われる。また、今回神経成長因子(NGF)の測定を計画しており、測定を行ったが、検出範囲以下であったため測定器具の感度を変える必要があると考えられた。 ストレッチチャンバーにおいて共培養を行い、神経細胞および皮膚細胞に同程度の伸展刺激を加えることも重要な点であると考えられた。コーティング剤の種類をラミニン単剤もしくはコラーゲンに変更し、ストレッチを試みる。ポリ-D-リジンは細胞傷害性が報告されている。 また、今年度は実験計画書における【研究3:ケラチノサイト・神経細胞共培養モデルにおけるAm80添加の検討】を施行予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験がやや遅れており、細胞や抗体の購入が少なかったためである。次年度は抗体、細胞の追加購入が増加し、支出が増える見込みである。
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