研究実績の概要 |
【2020年度】の研究内容-【タンパク結合型ICGを用いたリンパ輸送能の定量的評価】 前年度までの研究において、血清と混和させるICG濃度が0.007mg/dl以下であればICGが飽和せず(非結合型のICGが存在しない)、このトレーサーを皮内に投与した場合に周辺のタンパク質と殆ど結合することなく、比較的スムーズにクリアランスの測定が可能になるということが判明した。また、この濃度を基準として作成したトレーサーを健常人の第1・第4趾間の2カ所に皮内注射し、直後より近赤外線観察カメラを内蔵した蛍光ROI測定装置(Black Box, 浜松ホトニクス)により蛍光強度の測定を開始。蛍光強度が減衰する変化率⊿をICGクリアランス(=リンパ輸送能)として測定した。その結果、蛍光強度は時間経過とともに減少してゆき、健常人においては投与直後から100分までの観察期間ではROI値は平均0.15/min で減衰していくことが分かった。 2020年度においてはISL国際病期分類1期の下肢リンパ浮腫患者を対象として同様の研究を実施した。タンパク結合型ICGの皮内開始後からROI測定検査までの時間は120分と設定し、蛍光強度が減衰する変化率⊿を求めたところ、健常者群(n=3)では平均0.446±0.118であったのに対し、下肢リンパ浮腫群(n=8)では、平均0.267±0.155と低下していた。しかしながら2群間の有意差は認められなかった。本研究の限度として、対象症例数が少ないことと、薬剤投与部位における近赤外線照射の時間量によって蛍光色素の減衰量も変化しており、安定した計測を行うためのさらなる工夫が必要であると考えられた。
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