昨年に引き続き、ラットの背部体外式拡張器装着モデルを使って、コントロール群(A群)、持続けん引群(5日間、25mmHg;B群)、間欠牽引群(5日間、15分の持続けん引の後2分間の陰圧解除の繰り返し;C群)をそれぞれn=5づつ作製し、けん引終了後の背部皮膚を一部採取し、lectin及び Hoechst 33342による免疫染色をおこない、皮下毛細血管を定量評価した。結果、A群<B群<C群の順でそれぞれに有意に毛細血管の増生を認めた。これにより、物理的けん引によって血管新生が促され、さらにその効果は持続けん引よりも間欠的けん引のほうが有意に高いことが定量的に示唆された。 一方で、上記モデルの皮膚採取後に鼡径部より採取した皮下脂肪の砕片0.5グラムを移植し、2週間後に取り出して質量を計測比較した。結果は、A群に比べてB群、C群の移植脂肪の質量が有意に高かった一方、B群とC群には明らかな有意差は認めなかった。移植床の肥沃化は間欠的けん引のほうが優れていると思われたが、脂肪採取ならびに移植の手技的な影響、個体差、およびn数の問題で有意差が生じなかったと考えられた。 当初の予定では、ブタモデルを使用して上記の実験を行う予定であったが、装着の困難性、また経費的な問題でラットへとモデルの変更を余儀なくされたことは残念であった。しかしながら、組織を間接的に伸展させることで、皮下移植床の肥沃化が生じること、さらに間欠的けん引が有効であることが示唆されたのは新しい知見と言える。 期間内に最適プロトコールとともに人への使用の可能なデバイスの開発まで到達したかったが、適わなかった。今後は、得られた知見をもとに、脂肪移植を併用 した乳房再建に加えて瘢痕拘縮の治療などの臨床試験に導き、そして将来的には4)あらゆる軟部組織欠 損部の再建、瘢痕拘縮 や放射線障害などの組織の再生治療に応用させていきたい。
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