研究課題/領域番号 |
18K09497
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
風間 智彦 日本大学, 医学部, 助教 (80525668)
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研究分担者 |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
長岡 悠紀 日本大学, 医学部, 研究員 (30789186)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脱分化脂肪細胞 / DFAT / 脱分化 / 成熟脂肪細胞 / tdTomato / 創傷治癒 / 間葉系幹細胞 / ペリサイト |
研究実績の概要 |
本研究は Adipoq-ERT2Cre/tdTマウスに2種類の皮膚障害 (皮膚全層欠損、ブレオマイシンによる強皮症様病変)を作成し、障害部位に出現するペリリピン陰性tdT陽性の脂肪細胞由来線維芽細胞様細胞(Adipocyte-derived fibroblast-like cell: ADF)の局在、形質および機能解析を行なう。また種々のシグナル阻害薬などを用いてtdT陽性ADF出現に関わる分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。皮膚全層欠損による皮膚障害モデルの解析では、欠損作製後7日、14日目において欠損部の肉芽組織にtdT陽性ADFの出現が認められ、この一部には細胞増殖マーカーKi-67陽性を示す細胞が確認された。また、肉芽組織中のtdT陽性ADFの10.3% がReticular fibroblast、8.7% がPro-adipogenic fibroblast、2.8% がペリサイトのマーカーを発現していることが明らかになった。一方、ブレオマイシン誘導性皮膚障害モデルの解析では、皮膚障害部にtdT陽性ADFの出現は認められなかった。次に、タモキシフェン投与後のAdipoq-ERT2Cre/tdTマウス皮下脂肪組織を採取後、酵素処理により単離された成熟脂肪細胞を天井培養による脱分化を誘導し、in vitroにおいてADFの調製を試みた。その結果、線維芽細胞様形態を示すtdT陽性ADFの培養増殖が可能であることが明らかになった。フローサイトメトリー解析を行った結果、tdT陽性ADFは各種間葉系幹細胞マーカーを発現していることが示された。またin vitroにおける多分化能解析を行った結果、tdT陽性ADFは脂肪細胞への再分化能を有することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度において、実施予定であった皮膚全層欠損モデルにおけるtdT陽性ADFの形質解析は順調に進み、皮膚欠損作製後14日目の肉芽組織において、tdT陽性ADFは、一定の割合でペリサイト(NG2+)、Reticular fibroblast(DLK1+ Sca-1-)、Pro-adipogenic fibroblast(Sca-1+ DLK1+ or-)の形質を獲得していることが明らかになった。またtdT陽性ADFの一部にはKi-67陽性を示す細胞も確認され、増殖活性を有する細胞の存在が確認された。一方、ブレオマイシン誘導性皮膚障害モデルの病変部皮膚組織における組織学的検討を行なった結果、tdT陽性ADFの出現は確認されなかった。このためこの障害モデルを用いた以降の詳細な解析は実施せず、皮膚欠損モデルの解析に焦点を絞る方針とした。また、皮膚全層欠損モデルにおける肉芽組織を採取後、酵素処理により組織中の細胞を単離し付着培養することで、tdT陽性ADFの増殖培養を試みたが、解析に必要十分量な細胞を得ることが困難であった。そこで計画を変更し、タモキシフェン投与後のAdipoq-ERT2Cre/tdTマウス皮下脂肪組織から成熟脂肪細胞を単離し、この細胞を天井培養により脱分化誘導し、tdT陽性ADFの調製を試みた。その結果、線維芽細胞様形態を示すtdT陽性ADFの培養増殖が可能であることが確認された。調製されたtdT陽性ADFはマウス間葉系幹細胞と類似する細胞表面抗原プロファイル(Sca-1+CD29+CD106+CD11b-CD45-)を示し、脂肪細胞への再分化能を有することを明らかにした。以上の進捗状況により、いくつかの計画変更が起きたため、現在の進捗状況をやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度においては、Adipoq-ERT2Cre/tdTマウス成熟脂肪細胞からin vitro調製したtdT陽性ADFの形質および機能解析を進める。具体的には、CFU-Fアッセイ、多分化能解析(骨・脂肪・軟骨・平滑筋)、細胞表面抗原解析によるMSCマーカー発現解析、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行なう。また、tdT陽性ADF出現のメカニズムを解析することを目的として、皮膚全層欠損モデルに対して脂肪細胞分化に係わるサイトカインやシグナル阻害薬を投与し、肉芽組織中のtdT陽性ADF出現への影響を検討する。具体的には、Wnt3a、TNFα、IL11、PPARγ アンタゴニスト(T0070907)、β3アドレナリン受容体アゴニスト(CL316243)など検討する。
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