研究実績の概要 |
骨形成に関しては様々な研究からその詳細が明らかになりつつある。しかしながら、なぜ古い骨にのみ破骨細胞が分化し、骨吸収が開始されるのか?なぜ骨形成は破骨細胞が吸収した吸収窩でのみ起こるのか?つまり、骨吸収と骨形成の転換が起こるきっかけについてはほとんど分かっていない。骨芽細胞は何を目印に骨吸収窩に遊走してくるのであろうか?現在までに骨芽細胞が遊走する引き金となる因子については骨基質中に存在するPDGF, TGFβ, FGF, IGFなどが重要であるとされてきたが、直接証明はなされていない。我々は骨のない軟組織中に破骨細胞様細胞を分化させ、その周囲に遊走してくる細胞を調べた予備実験の結果から、破骨細胞が骨芽細胞系の細胞に対する遊走因子を分泌するのではないかと考えた。そこで、骨成分からの遊走因子の関与を排除するため、骨が存在しない部位で破骨細胞を分化させ骨の形成が惹起されるかについて調べることとした。本研究の初年度は軟組織中に破骨様細胞を分化させることによって異所性石灰化を惹起できるか否かを検討することとした。予備実験でHeLa細胞にsRANKLとM-CSFを強制発現させたHeLaRMをマウス背部に移植したが、HeLa細胞の増殖速度が速く、4週間以上の担がん保持は困難であった。この結果を受けて、sRANKL, M-CSF発現細胞をマウス胎児由来の細胞株であるNIH3T3細胞に変更した。sRANKLとM-CSFを発現させたNIH3T3RMはin vitroでマウス骨髄単核球をTRAP陽性の破骨細胞に分化させた。しかしながら、NIH3T3RMを移植した後、マウスの背部軟組織中でNIH3T3RMは盛んに増殖し、やがて脱落した。
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