研究実績の概要 |
Pontin,Reptin,RPAP3,PIH1D1からなるタンパク質複合体であるR2TP複合体は、細胞質から核に移行すると,リボソーム合成の場である核小体に局在する.悪性度の高い癌細胞はリボソームを多量に生合成していることが知られている.癌細胞における核小体でのリボソーム合成メカニズムの解明は創薬におけるターゲット創出にも繋がり,リボソーム合成阻害により癌細胞を特異的に死滅できれば,全く新しい抗癌剤の開発への足掛かりとなる. R2TP複合体は申請者らが発見した分子シャペロンである.分子シャペロンはタンパク質の折り畳みを助ける働きを持ち,癌化関連タンパク質を安定化することで,癌進展にも関わる.申請者らはこれまでR2TP複合体の分子シャペロン機能を解明し,14報の論文を発表してきた.2014年にはこれまでの研究を総説にまとめている
これまでの進捗状況として,申請者らはR2TP複合体構成因子(Pontin,Reptin)のfloxマウスとWnt1-Creマウスにより頭部神経堤細胞特異的KOマウスを作製し,R2TP複合体欠損の解析を行っている.KOマウスは胎生致死が認められ,胎生9.5日齢におけるマウス胎仔第一,第二鰓弓の形成不全,及び前頭鼻突起,後脳背側部における形態異常も確認された.このような知見はR2TP複合体の機能解明のみならず,発生生物学の分野を含む広い範囲の研究進展にも寄与する可能性がある.
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