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2018 年度 実施状況報告書

味細胞甘味調節機構の分子・生理基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K09507
研究機関岡山大学

研究代表者

吉田 竜介  岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (60380705)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード味覚 / 甘味 / レプチン / 肥満 / ホメオスタシス / 遺伝子改変マウス / カンナビノイド / 細胞内情報伝達経路
研究実績の概要

本研究は、レプチンや内因性カンナビノイドにより甘味受容細胞で活性化される細胞内情報伝達経路を焙り出すとともに、その細胞特異性についても追及し、甘味感受性調節機構の分子・生理基盤を明らかとすることを目的とする。
本年度は、甘味受容細胞でのレプチンのシグナル経路について検討した。甘味受容体コンポーネントT1R3を発現する細胞を同定できる遺伝子改変マウス(T1R3-GFPマウス)を用い、GFP発現味細胞のショ糖応答に対するレプチン投与の効果を調べると、約30%程度の応答抑制効果が見られた。レプチンシグナル経路の1つであるSTAT3を薬理学的に阻害した場合(Stattic投与)でもレプチンの甘味抑制効果は見られたが、PI3キナーゼ(PI3K)阻害剤(wortmannin、LY294002)を投与した場合、レプチンによる甘味抑制効果が見られなくなった。PI3Kの作用により産生されるホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)を免疫組織化学的に検出したところ、レプチン刺激により一部のT1R3発現細胞でPIP3の産生が見られ、これはPI3K阻害剤により抑制された。また、酸や塩の受容細胞と考えられるGAD67を発現する味細胞ではレプチン刺激によるPIP3産生は見られなかった。RT-PCRでは味蕾組織にもPI3Kの制御ユニットp85αやその上流に位置すると考えられるJAK2の発現も認められた。以上の結果から、レプチンによる甘味応答抑制にはPI3K経路の活性化が重要であることが示された。すなわち、甘味受容細胞に発現するレプチン受容体Ob-Rbの活性化によりJAK2→PI3Kが活性化され、産生されるPIP3によりKATPチャネルが活性化されるというシグナル経路が想定される。しかしながら、STAT5やAktなど他のレプチンシグナリングに関与する分子の機能についてはまだ評価できておらず、レプチンの甘味抑制効果に対するSTAT5阻害剤、Akt阻害剤の効果を解析する必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、申請者が九州大学から岡山大学へ移動したことに伴い、新たに動物実験を行うための各種手続きや施設への遺伝子改変動物動物の搬入などの問題があり、実験の実施に支障が出た。2019年4月1日現在で、ようやく使用する動物の親マウスが施設に搬入されたところであり、本マウスを使用する実験はしばらく進行が遅れると考えられる。

今後の研究の推進方策

本申請で実施する予定であった遺伝子改変マウスを用いた実験を本格的に行うことが出来るようになるのは、早くとも本年8月以降と予想される。この間、予定していた実験計画は行えないため、新たに遺伝子改変マウスを使用しない実験を行う。
レプチンの甘味抑制における最終標的はKATPチャネルと考えられる。また、肥満によりレプチンの甘味抑制効果が失われることも明らかとなっている。そこで、野生型マウスを用い、通常食または高脂肪食を与えた通常マウスおよび肥満マウスを作成し、KATPチャネル開口剤(diazoxide)や閉口剤(glibenclamide)の味覚応答への効果について行動実験により検討する。また、これらマウスの味蕾よりmRNAを精製し、定量RT-PCRによりレプチンシグナル分子・関連分子の遺伝子発現変化について解析する。これにより味細胞で生じるレプチン抵抗性のメカニズムについて検討する。
遺伝子改変マウスの使用が可能になれば、早急にレプチンシグナル経路に関する実験を進め、カンナビノイドのシグナル経路に関する実験を行う予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] モネル化学感覚研究所(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      モネル化学感覚研究所
  • [雑誌論文] Recognizing Taste: Coding Patterns Along the Neural Axis in Mammals2019

    • 著者名/発表者名
      Ohla Kathrin、Yoshida Ryusuke、Roper Stephen D、Di Lorenzo Patricia M、Victor Jonathan D、Boughter John D、Fletcher Max、Katz Donald B、Chaudhari Nirupa
    • 雑誌名

      Chemical Senses

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1093/chemse/bjz013

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Involvement of phosphoinositide 3-kinase in leptin signaling in sweet sensitive taste cells2019

    • 著者名/発表者名
      Ryusuke Yoshida, Robert F. Margolskee, Yuzo Ninomiya
    • 学会等名
      FAOPS2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Leptin signaling pathway linking from activation of leptin receptor to KATP channel activation in sweet sensitive taste cells in mice2018

    • 著者名/発表者名
      Ryusuke Yoshida, Robert F. Margolskee, Yuzo Ninomiya
    • 学会等名
      The 17th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms of Taste and Olfactory Perception
    • 国際学会
  • [学会発表] 味細胞におけるレプチンシグナリング2018

    • 著者名/発表者名
      吉田竜介
    • 学会等名
      第52回味と匂学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 末梢における甘味の受容と調節メカニズム2018

    • 著者名/発表者名
      吉田竜介
    • 学会等名
      第60回歯科基礎医学会学術大会
    • 招待講演
  • [備考] 岡山大学医歯薬学総合研究科口腔生理学分野

    • URL

      http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~oralphys/OralPhysiology.html

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公開日: 2019-12-27  

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