研究課題/領域番号 |
18K09509
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
松原 琢磨 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00423137)
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研究分担者 |
中富 満城 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (10571771)
古株 彰一郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (30448899)
自見 英治郎 九州大学, 歯学研究院, 教授 (40276598)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
破骨細胞による骨吸収には破骨細胞の分化と、分化した破骨細胞が機能する2つのステップが存在する。現在用いられている代謝性骨疾患治療薬は破骨細胞を喪失させ効果を発揮するが、一方で顎骨壊死などの有害事象の発生が問題となっている。破骨細胞機能を標的とすればより緻密に骨吸収をコントロールでき、有害事象発生の少ない薬剤として機能することが期待される。骨吸収機能を強力に活性化する分子であるc-Src-p130Casシグナルのうち、破骨細胞特異的なシグナルを明らかにすることにより新しい治療法の分子基盤になると考えた。申請者らはマイクロアレイによる網羅的な解析をおこない、c-Src-p130Casシグナル下流の候補分子として複数のKifファミリー分子を同定した。それぞれのsiRNAを用いて破骨細胞株RAW264.7細胞におけるKifファミリータンパク質の発現を抑制し、破骨細胞様細胞に分化誘導した。その結果、Kif1cの発現抑制のみが破骨細胞の骨吸収機能に重要なアクチン細胞骨格であるアクチンリングの形成を抑制した。そこで、Kif1cに着目し、実験を進めることとした。まず、破骨細胞におけるKif1cの発現を検討した結果、破骨細胞分化過程とともにKif1cの発現量が増加していた。また、Kif1cの組織発現を検討した結果、破骨細胞など骨系の細胞に発現を認めた。次に破骨細胞におけるKif1cの発現局在を検討した結果、アクチンリングおよび微小管構造の近傍に発現していることをみいだした。以上よりKif1cは破骨細胞の機能において何らかの役割を果たしていることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りKifファミリータンパク質のスクリーニングを終え、破骨細胞における機能がありそうなKif1cを見出した。また、Kif1cの発現プロファイルも確認でき、次の実験を行うためのアデノウイルスプラスミドの構築も終了した。
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今後の研究の推進方策 |
[1]Kif1c遺伝子発現抑制による破骨細胞機能の検討 野生型マウス骨髄細胞より分化誘導した破骨細胞にアデノウイルスシステムを用いてKif1cのshRNAを導入し、Kif1cの発現を抑制する。破骨細胞の分化をTRAP染色にて確認し、アクチンリング形成および吸収窩の測定により破骨細胞の機能を評価する。 [2] Kif1c遺伝子過剰発現による破骨細胞機能の検討 マウス骨髄細胞より分化誘導した破骨細胞にアデノウイルスシステムを用いてKif1cを過剰発現し、破骨細胞の機能を検討する。野生型破骨細胞においてKif1cは十分量発現しているため過剰発現では何も起きない可能性があるので深くは追及しない。
さらに、in vivoにおける機能を検討するために、Kif1cを破骨細胞特異的に過剰発現するマウスのプラスミドを構築中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はKifファミリー遺伝子以外の分子検討予定であったが、昨年度はKifファミリーにのみ着目したため、研究規模が当初より小さくなったため。今年度では当初予定通りKifファミリー以外にも破骨細胞機能に関与しそうな候補遺伝子である、膜タンパク質Xおよびカルシウム結合タンパク質Yに関する実験を行うための環境ができたので、実験を進める。
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