研究課題
Srcおよび、そのシグナル下流で機能するp130Casは破骨細胞が骨吸収をおこなう際に形成する特徴的な細胞構造アクチンリング形成に必須の分子である。そのため、Src遺伝子あるいはp130Cas遺伝子が欠損した破骨細胞は骨吸収をおこなえない。この、強力な骨吸収制御因子の分子シグナルの解明は代謝性骨疾患に対する治療法の発展につながると期待されている。申請者らは網羅的解析によりSrc-p130Casシグナルの下流遺伝子を探索し、その候補としてキネシンファミリータンパク質Kif1cに着目し、実験を行った。まず、マウスの様々な臓器・組織での発現を検討したところKif1cはSrcとp130Casの発現量が高い破骨細胞、精巣、卵巣および肺などの臓器に発現していた。一方、Src遺伝子欠損破骨細胞あるいはp130Cas遺伝子欠損破骨細胞ではKif1cはほとんど発現していなかった。次に、Kif1cが破骨細胞のアクチンリング形成に関与しているか否かを検討した。まず、細胞内局在を検索したところKif1cは破骨細胞のアクチンリングに局在していた。次に破骨細胞においてshRNAを用いてKif1cの発現量を抑制したところ、破骨細胞のアクチンリングが抑制された。これらの結果はKif1cが破骨細胞のアクチンリング形成に必須であり、Src遺伝子あるいはp130Cas遺伝子が欠損した破骨細胞では下流のKif1cの発現が減少することによりアクチンリング形成されないことを示唆している。これを裏付けるように、Kif1cをp130Cas遺伝子欠損破骨細胞に遺伝子導入したところ、アクチンリングが形成され、骨吸収能を有するようになった。以上の研究により我々はSrc-p130Casの下流で骨吸収を制御する新たな分子としてKif1cを見出した。
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