研究課題/領域番号 |
18K09510
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
東 泉 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (40228705)
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研究分担者 |
竹内 弘 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (70304813)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オステオカルシン / 骨代謝 / 神経細胞 / 糖代謝 |
研究実績の概要 |
最近、骨芽細胞の作るタンパク質「オステオカルシン(OC)」が脳の発達および機能維持に重要な役割をもつことが明らかとなった。この分子基盤を解明するため、本研究では、神経細胞の機能調節におけるオステオカルシンの役割とその分子機構の解明を目指す。平成30年度は、まず神経細胞に対する OC の直接作用の有無について、ラット副腎髄質褐色細胞腫由来細胞株PC12を用いた神経突起伸長モデルにより検討した。OC存在下・非存在下でPC-12を神経成長因子(NGF)で処理したところ、神経突起伸長(突起の長さ)は、OC添加によって促進された。一方、細胞あたりの突起数および突起を有する細胞の割合はOC添加の影響を受けなかった。このとき、OC処理によってPC-12におけるNGF受容体の発現量は変化しなかったが、NGF刺激によって惹起されるErkおよびAktのリン酸化は変化していた。これらの結果から、OCは培養神経細胞の分化・機能に対して細胞内シグナルの修飾を介して直接的な影響を及ぼしうることが確認できた。また、OCにはグルタミン酸残基のγカルボキシル化(Gla化)の有無によってGlu型とGla型が存在し、既知のOCの受容体であるGPRC6AはGlu型にのみ応答することが知られるが、PC12細胞を用いた本実験ではGlu型およびGlu型が同程度の作用を有していたことから、OCはGPRC6A以外の受容体を介して作用を発揮したことが示唆された。引き続き同モデルを用いたOCの作用とその機序について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の当初の目的である、「オステオカルシン(OC)が培養神経細胞に対して、その分化や機能に直接的な作用を有するかどうか」に関して前向きな結果を得ることができたため、予定していた計画を進めることができている。また、関与するOCの受容体も既知のものとは異なる受容体の存在が示されたため、予定通りにその同定を試みる実験を進めることができる。受容体候補の網羅的探索は予備的に初年度の予定に含めていたもので、2年目の実施となる点について問題ない。平成31年度は、神経細胞の初代培養系を用いたOCの効果の検証とOCの受容体候補探索等を中心に実験を進める。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、オステオカルシン(OC)の効果を確認したPC12細胞の実験系を継続しつつ、セロトニン分泌培養細胞株RN46Aを用いた開口分泌への作用、初代培養神経細胞を用いた細胞機能へのOCの効果を検討する。一方、これら細胞のうち、最もOC刺激への応答の顕著なものを使用して新奇OC受容体の網羅的探索に着手する。各種培養神経細胞の実験系におけるOCの効果とその作用発現の分子メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、培養神経細胞に対するOCの効果に関する予備実験が予想以上に順調に進んだ場合に受容体の網羅的探索を開始できるように、必要となる費用を予備的に初年度に計上していた。PC12細胞を用いた機能実験で予想よりも結果が得られたために当該実験を優先して時間を要したこと、また予備的実験が予想以上に順調に進むことはなかったことから、OCの候補受容体の網羅的探索に必要な費用として次年度に持ち越した。同費用は、初年度の実験結果を踏まえて予定通り網羅的探索に使用する。翌年度分に計上した助成金も当初2年目に計画していた実験に使用する。
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