研究課題
最近、骨芽細胞の作るタンパク質「オステオカルシン(OC)」が脳の発達および機能維持に重要な役割をもつことが明らかとなった。この分子基盤を解明するため、本研究では、神経細胞の機能調節におけるオステオカルシンの役割とその分子機構の解明を目指している。令和1年度は、前年度に神経細胞様細胞への分化がOCによって修飾を受けることが確認されたラット副腎髄質褐色細胞腫由来細胞株PC12を用いて、神経細胞におけるOCの直接作用について検討を加えた。PC12細胞をH2O2処理するとアポトーシスが誘導されたがOC存在下では非存在下と比較してH2O2処理によるアポトーシス誘導が抑制された。OCにはグルタミン酸残基のγカルボキシル化(Gla化)の有無によってGlu型とGla型が存在し、既知のOCの受容体であるGPRC6AはGlu型にのみ応答することが知られるが、PC12細胞を用いた本実験ではGlu型およびGla型が同程度の作用を有していたことから、OCはGPRC6A以外の受容体を介して作用を発揮したことが示唆された。そこで、新たにOC受容体として報告されたGpr158とGPRC6Aの発現をRT-PCR法にて確認するとPC12細胞ではGPRC6Aの発現は低いもののGpr158の発現は比較的高く、前述のOCの効果はGpr158を介して発揮されることが示唆された。引き続き同モデルを用いたOCの作用とその機序についてGpr158の関与や細胞内生存シグナルへの影響などについて検討を進めている。
3: やや遅れている
令和1年度の当初の目的である、「オステオカルシン(OC)が培養神経細胞の生存や機能に与える影響とその作用機序について関与する受容体の網羅的解析等を実施する」に関して、OCが神経様細胞PC12の酸化ストレスによる細胞死から保護的な作用を有するという新しい働きを見出すことが出来たが、一方で保有する純水製造機を始めとする機器の不具合などにより研究室全体の実験が遅れ気味となった。関与する受容体の網羅的解析を行うことができなかったものの、我々の見出した神経細胞様細胞におけるOCの作用が、新たに見出されたOC受容体を介することを示唆する結果を得られた点では遅れを取り戻しつつある。しかし、神経細胞の初代培養系を用いたOCの効果の検証等も予定していたが実施できなかった点で、やや遅れている。
令和2年度は、PC12細胞におけるOCの効果への関与が示唆された受容体Gpr158の役割を中心に、受容体のノックダウンによる関与の程度や下流の細胞内シグナルへの影響について検討する。また、PC12細胞で確認された神経細胞分化や生存におけるOCの作用を、初代培養神経細胞を用いて検討する。これら細胞培養系の実験を中心に進め、OCによる脳の保護効果発現の分子基盤解明へとつながるOCの神経細胞への直接作用について明らかにする。
当初、神経細胞様の細胞株におけるOCの効果について生存促進効果などあらたな作用を見出して研究に進展が見られたものの、所属機関の動物実験施設のマウス感染による数ヶ月間にわたる封鎖、研究室の冷凍庫、純水製造機の不具合等により、実験のやり直しや停滞が生じた。予定していた初代培養細胞を用いた実験や候補受容体のノックダウン実験などを翌年度に繰り越すことになったため、予算についても次年度使用が生じている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
Heliyon
巻: 6 ページ: e03301
10.1016/j.heliyon.2020.e03301
Journal of Endocrinology
巻: 244 ページ: 285-296
10.1530/JOE-19-0288.
https://www.kyu-dent.ac.jp/research/lecture/oral_pharmacological