研究課題
最近、骨芽細胞の作るタンパク質「オステオカルシン」が脳の発達および機能維持に重要な役割をもつことが明らかとなった。オステオカルシンは膵臓、脂肪組織、骨格筋、腸上皮細胞や精巣に存在する受容体GPRC6Aに作用して全身の糖・エネルギー代謝やホルモンの分泌に影響を与えるため、オステオカルシンの脳への作用は、これらの二次的な効果と中枢神経系への直接作用の関与が考えられる。本研究では、オステオカルシンの神経細胞への直接的な作用の存在を明らかにすることを目指した。ラット副腎髄質褐色細胞腫由来細胞株PC12を神経細胞様細胞に分化させてオステオカルシンの直接作用を検討したところ、細胞増殖促進、神経成長因子(NGF) 依存的な分化の促進、過酸化水素処理によって誘導されるアポトーシスの抑制効果を認めた。ラット脳組織および神経細胞様に分化したPC12細胞では、オステオカルシンの受容体としてGPRC6Aの発現をほとんど認めず、新たにオステオカルシン受容体候補としてみいだされたGpr158を高発現していた。さらにGlu型とGla型が存在するオステオカルシンが同程度の効果を示したことから、オステオカルシンの神経細胞への直接作用は、主に受容体Gpr158を介して発揮されることが強く示唆された。また、オステオカルシンの単独刺激によるErk経路の活性化を認め、神経細胞におけるオステオカルシンの種々の作用はErk経路の活性化を通じて発揮されることが示唆された。本研究成果は、認知障害や発達障害の予防や治療において、骨タンパク質オステオカルシンや受容体Gpr158を標的とする新たな戦略開発に寄与することが期待される。
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