研究課題
本研究は適応範囲の広い歯の再生医療の実現に向けて、多能性幹細胞であるiPS細胞から歯原性細胞のサポート無しに歯原性上皮細胞と間葉細胞へ誘導できる技法の開発を検討した。1)ヒトiPS細胞からEGFとFGF-2によってSOX10陽性の神経堤由来細胞へ誘導した後に、BMP-2などの生理活性物質の刺激によって歯原性間葉細胞へ誘導させた。これらの誘導で、DSPPやRUNX2遺伝子の発現上昇が認められたことより、象牙芽細胞様細胞へと分化したことが考えられた。2)ヒトiPS細胞からレチノイン酸とBMP-4によってCK14陽性のケラチノサイトへ誘導した後に、FGF-8などの成長因子の刺激によって歯原性上皮細胞へ誘導させた。これらの誘導によって、アメロゲニンやアメロブラスチン遺伝子の発現上昇が認められたことから、エナメル芽細胞様細胞へと分化したことが考えられた。3)ヒトiPS細胞から誘導したエナメル芽細胞様細胞と象牙芽細胞様細胞を接触させるようにコラーゲンゲル内に包埋して、上皮-間葉相互作用を利用した歯胚再構成培養を実施した。コラーゲンゲルに包埋したエナメル芽細胞様細胞と象牙芽細胞様細胞は、培養経過に伴い一塊となったスフェロイドを形成した。4)再構成スフェロイドをマウス腎皮膜へ移植して、生育したスフェロイドを構成する細胞の極性や分布について組織形態学ならびに分子生物学的に解析している。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度に、1)ヒトiPS細胞からEGFとFGF-2によって神経堤由来細胞へ誘導後に、BMP-2を添加して歯原性間葉細胞である象牙芽細胞様細胞へ分化させることができた。2)ヒトiPS細胞からレチノイン酸とBMP-4によってケラチノサイトへ誘導後に、FGF-8などを添加して歯原性上皮細胞誘導であるエナメル芽細胞様細胞へ分化させることができた。本年度は、3)ヒトiPS細胞から誘導したエナメル芽細胞様細胞と象牙芽細胞様細胞による、上皮-間葉相互作用を利用した歯胚再構成培養を実施し、さらに再構成スフェロイドをマウス腎皮膜へ移植して、その後組織形態学ならびに分子生物学的に解析している。
1)これまでの研究結果から、ヒトiPS細胞からレチノイン酸とBMP-4によってCK14陽性のケラチノサイトへ誘導した後に、FGF-8などの刺激によって歯原性上皮細胞へ誘導させた。これらの誘導で、アメロゲニンやアメロブラスチン遺伝子の発現上昇したことから、エナメル芽細胞様細胞へ分化することが明らかになった。さらにエナメルタンパク質の発現が上昇する効率的な誘導条件を検討する。歯胚形成期に発現するFGF-8以外の成長因子の添加や、添加のタイミングを変化させて、エナメルタンパク質の発現を指標に効率的な誘導法を検討する。2)ヒトiPS細胞から誘導したエナメル芽細胞様細胞と象牙芽細胞様細胞からなる、再構成スフェロイドをマウス腎皮膜へ移植して、生育したスフェロイドを構成する細胞の極性や分布について、引き続き組織形態学ならびに分子生物学的に解析する。
細胞分化誘導後の遺伝子発現とタンパク質の発現解析で、幾つか用いなかった試薬があった。前年度の残金は、用いなかった遺伝子発現ならびにタンパク質の発現解析用の試薬にあてる。
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