研究課題
骨は、破骨細胞による吸収と骨芽細胞による形成からなるリモデリングを繰り返すことによって、形態と強度を維持している。また、骨細胞が骨吸収と骨形成を制御する細胞であると認識されるようになってきた。骨吸収と骨形成のバランスが崩れると、骨量の減少あるいは増加が起こる。前者の代表的な例として骨粗鬆症、後者のそれとして大理石骨病などがあげられる。一酸化窒素(NO)や活性酸素種(ROS)が骨吸収と骨形成を制御するとういう報告は多い。我々は、一酸化窒素(NO)と活性酸素種(ROS)の共通した下流シグナル分子として同定された、8-ニトロ-cGMPによる骨吸収と骨形成の制御について解析することにした。本年度はまず、破骨細胞分化過程における8-nitro-cGMPの生成および破骨細胞分化に対する8-nitro-cGMPの影響について検討した。破骨細胞分化はNO、ROSおよび活性窒素種によって分化が促進されるという報告が多い。今回の解析では、破骨細胞前駆細胞であるマウス骨髄マクロファージおよび破骨細胞で8-nitro-cGMPの生成が確認され、炎症性サイトカインはその生成を促進した。また、外来性の8-nitro-cGMPは骨髄マクロファージからRANKL依存的な破骨細胞への分化を促進した。一方、ニトロ下されていないcGMPにはそのような活性は認められなかった。続いて、骨細胞様細胞株Ocy454細胞における8-nitro-cGMPの生成を解析した。炎症性サイトカインによる8-nitro-cGMP生成の亢進は認められなかったが、副甲状腺ホルモンおよびプロスタグランジンE2によって8-nitro-cGMPの生成が促進することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
破骨細胞および骨細胞で8-nitro-cGMPの生成を確認できた。8-nitro-cGMPは破骨細胞分化を促進することを見出した。破骨細胞前駆細胞および破骨細胞で、炎症性サイトカインが8-nitro-cGMPの生成を促進したことから、炎症性の骨破壊の一部を8-nitro-cGMPで説明できる可能性が示唆された。また、骨細胞での8-nitro-cGMPの生成が確認できたことから、研究の発展が期待される。
主に、骨形成を担う骨芽細胞における8-nitro-cGMPの生成と機能を解析する予定である。
8-nitro-cGMPの消去系の主要な酵素であるcysteine persulfide synthetase遺伝子欠損マウスの使用が平成31年度から可能になることから、そのマウス由来の骨構成細胞を用いた実験を行うための費用を繰越す。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
In Vitro Cellular & Developmental Biology - Animal
巻: 55 ページ: 45-51
10.1007/s11626-018-0304-0.
Nitric Oxide
巻: 72 ページ: 46-51
10.1016/j.niox.2017.11.006
実験医学
巻: 36 ページ: 837-842
http://www10.showa-u.ac.jp/~oralbio/