研究課題/領域番号 |
18K09513
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮本 洋一 昭和大学, 歯学部, 准教授 (20295132)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 一酸化窒素 / 活性酸素種 / 酸化ストレス / 活性イオウ分子種 |
研究実績の概要 |
炎症などで亢進する酸化ストレスおよびニトロ化ストレスの新規細胞内メディエーターである8-ニトロ-cGMPが骨リモデリングに果たす役割を解析している。すでに昨年度の本研究で、8-ニトロ-cGMPが破骨細胞分化を促進することを見出し、報告した(Kaneko K, et al., Nitric Oxide 72: 46-51, 2018)。8-ニトロ-cGMPの細胞内における分解・不活性化は、イオウ原子が複数連結したパースルフィドあるいはポリスルフィドなどの活性イオウ分子種との反応で開始されることが明らかとなっている。そこで本年度は、破骨細胞の分化に対するパースルフィド/ポリスルフィドの影響を解析することとした。活性イオウ分子種ドナー(Na2Sn, nは2-4)はRANKL誘導性の破骨細胞分化を促進した。その強さは、Sの鎖長が長いほど強かった。RANKL添加24時間以内に発揮された。活性イオウ分子種の産生酵素であるCARS2の遺伝子欠損マクロファージの破骨細胞分化は野生型に比べ抑制されていたが、Na2S4の添加で回復した。以上の結果から、活性イオウ分子種は破骨細胞分化の内因性促進因子と考えられる。また活性イオウ分子種の破骨細胞分化促進作用がRANKL刺激24時間以内に発揮されることから、活性イオウ分子種は破骨細胞分化の運命付けに関わることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破骨細胞分化が酸化・ニトロ化ストレスのメディエーターである8-ニトロ-cGMPによって促進される一方で、強力な抗酸化活性を有し、8-ニトロ-cGMPの分解促進作用も認められる活性イオウ分子種によっても促進された。これは、当初の予想と異なる結果であるが、8-ニトロ-cGMPと活性イオウ分子種が、それぞれ、異なる標的分子を持つことを示すもので、破骨細胞分化と酸化ストレス・還元ストレスの役割を解明する上で、重要な知見と言える。
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今後の研究の推進方策 |
破骨細胞分化に関連した細胞なシグナル伝達の変化を解析することで、8-ニトロ-cGMPと活性イオウ分子種が破骨細胞分化をどのように促進するかを明らかにする。また、骨形成を担う、骨芽細胞分化に対して活性イオウ分子種がどのような効果を持つかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
8-ニトロ-cGMPの消去系酵素CARS2はシステイン-tRNA合成酵素活性とシステイン・パースルフィド合成酵素の2種類の酵素活性を持つ。これまで用いてきたCARD2遺伝子ヘテロ欠損マウスは、両方の活性をヘテロに欠失させたマウスである。一方、本課題の連携研究者は同酵素のシステイン-tRNA号素活性を残し、システイン・パースルフィド合成酵素活性発現のための部位のみを変異させたマウス(CARD2AINK)を作出している。今年度、CARD2AINKを導入し、システイン・パースルフィドの重要性を解析することを予定していたが、同マウスの凍結精子の導入が年度末までずれ込んでしまった。このマウスを来年度から使用するために、凍結精子からのCARD2AINKの個体復元を行うために必要な費用を残し、来年度使用したいと考えている。
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