研究課題/領域番号 |
18K09514
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗うつ薬 / セロトニン / 唾液腺 / マイクロダイアリシス / アセチルコリン / 唾液分泌 |
研究実績の概要 |
抗うつ薬は口腔乾燥を示す代表的な薬物である。一般にムスカリン受容体拮抗作用は三環系が最も強く、四環系、SSRI(選択的セロ トニン再取り込み阻害薬)が次いで、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)とNaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン 作動性抗うつ薬)にはほとんどないとされている。口腔乾燥症の副作用を有する抗うつ薬には再取り込み阻害によるセロトニン作用を増強する薬物が多い。ラッ ト顎下腺にセロトニンを還流すると唾液分泌量が減少することが報告されているが、その機序は不明である。本研究では、唾液腺セロトニンが唾液分泌に与える影響を唾液腺in vivoマイクロダイアリシス法などを用いて解析することを目的とした。イミプラミンなどの抗うつ薬をWistar系雄性ラット(8週齢)第三脳室内投与後、 Ketamine/Xylazine麻酔下でPilocarpineを投与し唾液分泌量を測定した結果、抗うつ薬投与により唾液分泌量に有意な変化が認められなかった。Wistar系雄性ラット顎下腺に挿入した唾液腺用マイクロダイアリシス透析プローブを介して唾液腺in vivo マイクロダイアリシス法により連続的に採取されたアセチルコリン濃度が唾液腺局所における副交感神経活動を反映しているについてピロカルピンを第三脳室内投与しアセチルコリン遊離量が有意に増加することを明らかにした。鼓策神経電気刺激あるいは高カリウムリンゲル液還流によりアセチルコリン遊離量が一過性に増加することから、唾液腺in vivo マイクロダイアリシス法により連続的に採取されたアセチルコリン濃度が唾液腺局所における副交感神経活動を反映していることを明らかにした。また、同時に唾液分泌量を測定するため主導管開口部に挿入したPEチューブ内の唾液移動を動画撮影し、唾液分泌量、分泌速度をリアルタイムで 観察し、測定するシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種抗うつ薬を第三脳室投与した後のピロカルピン刺激下での唾液分泌量が変化しないこと、ピロカルピンを第三脳室内投与しアセチルコリン遊離量が有意に増加すること、唾液腺マイクロダイアリシス法と唾液分泌量をリアルタイムで観察し、評価するシステムを確立することが出来た。計画した研究タイムスケジュールにほぼ従って進捗している。マイクロダイアリシス法を実施している麻酔下の動物での唾液分泌量の測定法を新たに構築することが出来た。このシステムにより、エンドポイントである唾液分泌量変化について詳細な検討 が行えるようになったと考える。以上の理由より、当初の実施計画におおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
顎下腺灌流標本などを用い、ムスカリン受容体刺激(Carbachol)、α1アドレナリン受容体刺激(Phenylephrine) またはβ2アドレナリン受容体刺激(Salbutamol)下で抗うつ薬、セロトニン受容体サブタイプ選択的アゴニスト、アンタゴニストを動脈カニューレ よりRinger液で灌流し、唾液量を測定する予定である。セロトニン受容体選択的アゴニスト、アンタゴニストなどをマイクロダイアリシス法により投与し、唾液腺細胞外液中の神経伝達物質分泌量変化、唾液分泌量変化についてリアルタイム に測定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度にセロトニン投与による唾液腺マイクロダイアリシスによるノルエピネフリン遊離量の変化について解析する予定であったが、計画を変更し全てのサンプルをアセチルコリン遊離量解析に使用することとしたため、未使用額が生じた。2020年度にセロトニン投与による唾液腺内神経由来ノルエピネフリン遊離量の変化についても検討する予定である。
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