研究課題/領域番号 |
18K09516
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
納富 拓也 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (70542249)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リソソーム / 破骨細胞 / RANKL |
研究実績の概要 |
老化や閉経に伴う骨粗鬆症患者数は1000万人といわれ、高齢化社会をむかえて、その数は増加し続けている。この骨粗鬆症を含む骨疾患に関する研究は、骨吸収を抑制することを目的として、破骨細胞形成因子であるRANKL分子を中心として進展してきたが、反作用を持つ破骨細胞分化抑制因子OPGについては、応用研究は少ない。骨芽細胞でのRANKLとOPGを含むリソソーム小胞の細胞膜への輸送は分子毎に不均一であり、これはリソソーム小胞が分子/刺激条件に応じて選別輸送されることを示す。OPGを骨疾患に応用するには、RANKL/OPG選別輸送条件とともに、細胞生物学の核心的課題の一つであるオルガネラ選別輸送機序を明らかにする必要がある。本研究では、リソソーム小胞を介したRANKL/OPG選別輸送条件探索と生体内応用を主目的として、オルガネラ選別輸送機序に焦点を当てる。本年度は、RANKL/OPGリソソーム選別輸送の力学的刺激による発生条件を最初に検討した。RANKLとOPGに異なる蛍光タンパクを付与した分子を遺伝子導入した骨芽細胞を用いて、伸展刺激を行ったところ、強度の力学的刺激により、明確な選別輸送が認められた。ウェスタンブロッティング法にて検討したところ、OPG分子の細胞膜移行が認められたが、RANKL分子の細胞膜移行はわずかであった。また、光照射により細胞膜電位変動を生じさせて、選別輸送の条件検討を行った。一時的な光誘導脱分極により、RANKLもしくはOPGを含むリソソーム小胞の細胞膜への移行を確認したが、明確な選別輸送は認められなかった。現在、光照射の条件検討を中心に実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験中断期間があり、遅れが出ているが、選別分子輸送の発生条件スクリーニングは、おおまかな条件検討は終了して再実験を行っている。光感受性分子を用いた分子輸送機構の光制御については、特定の光照射パターンによるリソソームの細胞膜移行を確認したが、結果再現性が明確でないため、引き続き条件検討を進めている。また、生体内での分子選別輸送制御については、上述のin vitroの実験結果に応じて、動物飼育(マウス)を断続的に行い、力学的刺激と薬剤投与の条件検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
光照射による選別輸送の制御条件は、引き続き実験を進める。マウスを用いた生体内での検討では、残り実験期間を考慮して、短期間の力学的刺激を行い、RANKL/OPG分子移行とその影響を骨形態計測・免疫染色にて検証する。また、in vivoの実験系がうまくいかないときに備えて、頭頂骨・長管骨の組織培養も並行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は、光照射実験および力学的刺激実験について、条件検討および光照射強度・パターン調整の時間を要したこと、またCOVID-19の影響による断続的な実験中断に伴う実験回数減少のためである。具体的には、培養実験と細胞を使用した力学的刺激実験の減少により、消耗品費(試薬費および培養器具費)が少なくなったことと、レーザー顕微鏡の故障による共通施設利用頻度の減少である。これら実験回数の減少に応じて、消耗品費の減少が生じた。実施できなかった培養実験および計画にある動物実験計画を再開して、前年度に計画していた消耗品費(試薬・培養器具・実験動物)をあてる予定である。また、増加予定である実験を並行して推進するために、実験補助員増員のための短期雇用に充てる。
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