研究課題/領域番号 |
18K09522
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上原 範久 九州大学, 歯学研究院, 助教 (30368211)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨細胞 / 骨芽細胞 / 細胞外小胞 / 破骨細胞 / 骨転移 |
研究実績の概要 |
骨組織では、破骨細胞・骨芽細胞・骨細胞が直接的あるいは液性因子を介して細胞間ネットワークを構築し、様々な刺激の感受とその応答により骨恒常性を維持している。近年、エンドソーム由来の細胞外分泌小胞であるエクソソームが、骨代謝細胞間における情報伝達ツールとして細胞機能の調節を行うことが明らかとなった。本年度は、病的骨破壊を惹起しうる因子として、骨転移性癌細胞由来細胞外小胞(EV)を用い、骨芽細胞機能に及ぼす影響を検討した。EVは、非転移性(67NR)および骨転移性マウス乳癌細胞(4T1)の培養上清より、ポリマー沈殿法を用いて単離した。マウス頭蓋冠由来骨芽細胞(MC3T3-E1)及びマウス骨髄間質細胞(ST2)を用い、EV添加後のRANKL、OPG発現変化をreal time-PCRおよびELISAにより検討した。また、MC3T3-E1およびST2の分化・石灰化への影響はreal time-PCR、ウェスタンブロットおよびアリザリンレッド染色により検討した。その結果、MC3T3-E1およびST2において、67NR-EVおよび4T1-EV刺激によるRANKL、OPG発現の変化は認められなかった。骨芽細胞分化誘導において、4T1-EV存在下では顕著な石灰化の抑制が観察され、それに伴い骨芽細胞成熟に重要な転写因子であるATF4の発現低下がみられた。興味深いことに、骨芽細胞分化刺激後のERK、JNK、p38MAPKのリン酸化亢進が4T1-EV存在下では顕著に抑制された。以上の結果から、4T1-EVはMAPKシグナルの調節を介して骨芽細胞成熟を制御する新規細胞間コミュニケーションツールとして機能する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに骨転移性癌細胞由来細胞外小胞が骨芽細胞の分化を抑制することを見出し、その制御機序としてMAPキナーゼシグナルの関与を示唆する結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
骨転移性癌細胞由来細胞外小胞に対する骨芽細胞・骨細胞機能に対する影響を調査する。重要な因子に関しては、遺伝子ノックダウンあるいは強制発現系の構築を行うことでその制御機序の詳細な検討を行う。くわえて、結果を論文で公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に使用している細胞に適した細胞培養用血清を購入予定だったが、血清を選定する上で、ロットチェックが終了した段階での納入が当該年度内に納入が間に合わなかったため、次年度に血清購入に使用する予定である。
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