研究課題
味細胞に発現する味覚受容体は、全身の様々な臓器に発現し、体内のエネルギーおよび化学受容センサーとして生体恒常性の維持や生体防御に寄与することが示唆されている。これらのシステムの破綻は、生活習慣病やがんなどの病態と関連する可能性があり、その基礎として、味覚受容体とリガンドとの結合特性および受容体生理機能を解明することが必要不可欠である。味覚修飾物質ミラクリンは、酸性条件下で甘味を誘導する甘味誘導効果を有する。以前行ったミラクリンの機能解析により、甘味受容体TAS1R2+TAS1R3は、酸性条件下でリガンドに対する感受性を変化させる可能性が示唆された。そこで甘味受容体TAS1R2+TAS1R3の甘味物質に対する感受性において、pHが与える影響を調べたところ、人工甘味料サッカリンの濃度応答が低pH条件下で低下することが明らかになった。このpH依存的なサッカリン濃度応答変化は、種差があり、ヒトには有効でマウスには無効であった。この種差を利用して、TAS1R3の膜貫通ドメインが関与していることが明らかになった。さらに同ドメインに点変異を加えたところ、サッカリン感受性のpH依存性の減少を認めた。最終年度は、味覚受容体膜貫通領域を脂質二重膜に浮かべ、外部にイオン水を配置することで、生態環境に近い、分子モデルを構築し、分子動力学シミュレーションを行った。その結果、人工甘味料や甘味抑制物質による相互作用で受容体の構造が変化し、活性化・不活性化状態へ移行する動きを観察することに成功した。
すべて 2020
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 21 ページ: 8958
10.3390/ijms21238958.