研究課題
糖尿病は代表的な糖代謝異常疾患であるが、近年、糖尿病の新たな合併症として骨折の増加が注目されている。インスリン依存性の1型糖尿病では骨芽細胞のインスリンシグナルが不足することにより骨形成が低下し、骨量が減少することが知られている。一方、インスリン非依存性の2型糖尿病では「骨量は減少しないが、骨折リスクが上昇する」という特徴がある。その理由として、骨基質が終末糖化産物(AGEs)によって糖化変性し、骨質が劣化することで「硬くて脆い」骨になり強度が低下すると考えられている。しかし、2型糖尿病において骨量は減少せず高骨密度が維持される機序については未だ不明である。これまでに我々は、2型糖尿病で血中濃度が増加するAGEsの前駆物質の1つであるメチルグリオキサール(MG)を培養系に添加すると、骨芽細胞株MC3T3-E1細胞の石灰化が亢進し、形成された石灰化物の性状が対照と比べて硬さが増加し、粘弾性が低下することを見出し報告した。2018年度に活性イオウ分子種(RSS)がMGによる石灰化亢進作用を抑制し、2019年度はRSS合成酵素であるミトコンドリア型システインtRNA合成酵素(CARS2)の遺伝子ノックダウンがMC3T3-E1細胞のALP活性と石灰化を抑制するする結果が得られた。2020年度は、糖尿病における骨の石灰化異常とその改善方法を探索する研究を行った。MC3T3-E1細胞の培養系にMGを高濃度(500μM)で添加すると石灰化が抑制された。ここに、硫化水素ドナーとして硫化水素ナトリウム(NaSH)を100μMの濃度で添加すると、MGによる石灰化抑制が回復した。この結果から、硫化水素はMGによる石灰化異常に対し、新規治療方法の一つになり得る可能性が示された。
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