研究課題/領域番号 |
18K09530
|
研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
田谷 雄二 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30197587)
|
研究分担者 |
添野 雄一 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (70350139)
白子 要一 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (50756377) [辞退]
堀江 哲郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10508675)
佐藤 かおり 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90287772)
佐々木 康成 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 部長 (70332848)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 歯学 / 病理学 / マウス胎仔 / 顎顔面発生 / 舌下神経 / 舌筋発生 / ガイダンス因子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、舌運動を担う舌下神経の発生に焦点を絞り、後頭神経核から遠隔の舌原基までの軸索伸長を誘導する分子制御の仕組みを明らかにすることである。舌下神経は舌運動を支配する舌組織唯一の運動神経である。舌運動支配のために舌下神経と舌筋が連結するには、舌下神経軸索が舌組織の正確な部位まで伸長していることが前提となる。今までの私たちの研究から、マウス舌初期発生では、後頭神経核から起始した舌下神経軸索は、先行する舌筋前駆細胞の移住経路を辿って伸長し舌原基にまで到達することが想定された。この仮説を実証するために、本年度では、まず胎生9.5~12.5日のICRマウスの連続切片を筋系譜(Desmin)と神経軸索(Gap43)の特異抗体で二重標識し、後頭領域から舌原基までの舌筋前駆細胞の移住と舌下神経軸索の伸長の過程を追跡した。その結果、① 舌下神経軸索は胎生10.5日に後頭体節の近傍にある複数の後頭神経核から起始し、収束後、節間動脈近傍の間充織と第6→2鰓弓を経て舌原基までの長距離を決まった経路を辿って伸長し、約24時間で(胎生11.5日頃)到達する。一方、舌筋前駆細胞は後頭体節の軸下先端部から出芽し、細胞集団として体幹間充織を遊走、第4→2鰓弓を経て、胎生10.5日に下顎突起中央部に達することをそれぞれ再確認できた。②神経軸索と筋前駆細胞を標識した3次元観察では、後頭神経核から起始した舌下神経軸索は後頭体節近傍の体幹間充織内で先行して遊走する舌筋前駆細胞の集団と合流後、細胞集団のなかを互いに接触しながら伸長し、下顎突起正中部の外側舌隆起直下に到達するのが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では、自動回転式ミクロトームとSTSシステムを用いて、胎生9.5~12.5日のICRマウス頭頸部の連続切片を作製した。得られた連続切片を筋系譜(Desmin)と神経軸索(Gap43)の特異抗体で的確に二重標識する条件を設定し、後頭領域から舌原基までの舌筋前駆細胞の移住と舌下神経軸索の伸長の過程を追跡した。免疫組織化学により染色した組織切片はバーチャルスライドシステムを用いて画像をデジタル保存した(NanoZoomer HT; Hamamatsu Photonics, Hamamatsu, Japan)。ImageJ plug-inソフト(3D configurationと3D representation)を使って画像中の筋系譜(Desmin;赤)と神経軸索(Gap43;青)を色抽出して分別し、連続組織切片から伸長する舌下神経軸索と遊走する舌筋前駆細胞集団の組織立体構築を行った。後頭領域から舌原基までの舌筋前駆細胞の移住と舌下神経軸索の伸長の過程を経時的に観察し、それぞれの経路と空間的な位置関係を解析することができた。 先行して実施したDNAマイクロアレイ分析を進めており、発現遺伝子のGO分類と、舌筋前駆細胞の移住および舌下神経軸索の伸長に関わる遺伝子を探索し始めている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度では、DNAマイクロアレイ分析を遂行し、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)解析により発現遺伝子のGO分類と、舌筋前駆細胞の移住および舌下神経軸索の伸長に関わる遺伝子の発現を探索する。マイクロアレイ解析データから抽出された有力な候補遺伝子についてはリアルタイムPCRにより発現量の変化を検証する。高純度RNA抽出には通常104細胞を用いるが、胎生11.5日下顎突起では15凍結切片からの組織顕微切断法による回収量に相当する。また、組織空間情報に基づき、後頭神経核から舌原基に至る舌下神経軸索の伸長経路上の成長円錐を含む領域(胎生10.5日体幹間充織、胎生11.5日舌原基)を顕微切断法により採取する。対照は舌筋前駆細胞からのシグナルを受容しない三叉神経軸索等の成長円錐を含む領域とする。 これらの解析結果を踏まえて、舌下神経軸索の伸長に特異的な遺伝子発現(mRNA)を制御するmicroRNA(miRNA)の解析を検討するために、miRNAマイクロアレイの実施に向けた準備を開始する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度では、研究分担者の作業配分を効率化したことと研究の進展状況から実験補助を依頼する予定であった大学院生への謝金が予定額よりも抑えられたこと、学会参加費用は大学からの資金で賄えることができたため、次年度使用額が生じた。 今後の研究の推進方策として、計画していた遺伝子発現の解析で、DNAマイクロアレイ解析で注目された遺伝子候補を増やして、これらの遺伝子候補についてリアルタイムPCRによる検証と発現パターン解析のために必要な核酸抽出試薬やリアルタイムPCR用の試薬とプライマーに使用する。
|