Cartducin(カートデューシン)はC1q/TNF-related protein 3 (CTRP3)ともよばれており、新たなカテゴリーである「C1q/TNFファミリー」に属する。前年度の研究により、絶食させたCartducinノックアウトマウスの肝臓におけるALT遺伝子やAST遺伝子などのアミノ酸代謝関連遺伝子や、G6Pase遺伝子などの糖新生関連遺伝子の発現量の増加が、絶食時の糖新生に影響を与えている可能性を示唆する結果が得られた。これらの結果から、「Cartducinが絶食時における肝臓でのアミノ酸代謝にも関わっているのではないか?」という当初予期していなかった新たな可能性が考えられた。そこで、20時間絶食時におけるノックアウトマウスと野生型マウスの両群間の肝臓内の代謝産物の比較をメタボローム解析を用いて行った。その結果、Cartducinノックアウトマウスでは野生型マウスに比べて20種類のアミノ酸中10種類のアミノ酸(アスパラギン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、バリン)の濃度が有意に減少していることが判明した。肝臓内の濃度減少が見られた10種類のアミノ酸のうち、ロイシンとリジンを除いた8種類のアミノ酸は糖原性アミノ酸として知られている。また、ノックアウトマウスでは尿素回路の4つの中間体のうち、アルギニノコハク酸とオルニチンの濃度が有意に減少していることも明らかになった。以上の結果から、Cartducinが絶食時における肝臓でのアミノ酸代謝にも関わっているという当初予期していなかった新たな知見が得られた。
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