研究課題/領域番号 |
18K09536
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
門脇 知子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (70336080)
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研究分担者 |
筑波 隆幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (30264055)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞内小胞輸送 / アレルギー反応 / 脱顆粒 / マスト細胞 / Rabタンパク質 |
研究実績の概要 |
Rabタンパク質は小胞輸送の制御分子である。昨年度までにRab44がマスト細胞の脱顆粒を制御し、Rab44欠損マウスでは、DNP-HSAを抗原とする受動アナフィラキシーにおいても、卵白アルブミンで刺激する能動アナフィラキシー反応においても、明らかに野生型マウスよりRab44ノックアウトマウスの反応が減弱し、血中のヒスタミン濃度も有意に低いなどアレルギー反応の低下が確認された。 さらに、ラット好塩基球性白血病細胞であるRBL-2H3細胞にRab44を過剰発現させると抗原刺激により脱顆粒が亢進した。Rab44にGFPを融合させておくと、抗原刺激によりRab44がリソソーム膜からいったん細胞質に拡散し、細胞膜に移行するのが確認された。免疫共沈反応においてRab44はVAMP8と相互作用することがわかった。VAMP8はマスト細胞の脱顆粒の調節に関わるv-SNAREである。 Rab44は高分子量Gタンパク質であり、RabドメインのほかにEFハンドやコイルドコイルドメインを有する点で他のRabとは構造が異なる。GFP-Rab44を発現したRBL-2H3細胞およびHeLa細胞に、Caイオンモデュレーターを作用させ、Rab44の細胞内局在の時間的変化を観察すると、リソソーム膜上から細胞質に拡散することから、EFハンドにはCaセンサーの役割があることがわかった。また、コイルドコイルドメインを欠損すると酸性コンパートメントの大型化がみられることからオルガネラの形成・維持に関与すると考えられる。 このようにin vivoにおいてもin vitroにおいても、Rab44がアレルギー反応に関わっており、免疫細胞におけるリソソームやエンドソームの形成と小胞輸送、酵素や炎症性メディエータ―の細胞外分泌を制御していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoの解析では、野生型マウスの解析とともに、CRISPR/Cas9システムによるノックアウトマウスの作製が完了し、その解析が着実に進んでいる。一方、in vitroの解析においても、培養細胞における発現系が確立し、様々な変異体を発現し、分子レベルでの解析も進行している。
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今後の研究の推進方策 |
マウス骨髄由来マスト細胞やリコンビナントRab44を発現させた培養細胞において、Rab44と相互作用するタンパク質を同定するとともに、細胞系や大腸菌でのリコンビナントタンパク質作製により、Rab44の結晶構造解析を試みる。 これによってRab44を標的とした抗アレルギー薬の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス拡大防止による業務時間の短縮と、学外施設利用・共同研究の制限により、予定していた実験を一部分行えなかったため。 今年度、Rab44相互作用タンパク質の網羅的解析を行うためのMS解析試薬や、構造解析に必要な結晶化試薬の購入に充てる予定である。
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