研究実績の概要 |
口腔癌は頭頸部癌の中に含まれるが,その中でも術後補助化学放射線療法の恩恵を受ける可能性が低く,局所頸部制御が良好であっても遠隔転移により経過不良となる場合が多い。今後の口腔癌の生存率向上のためには遠隔転移の制御が重要である。なかでも癌細胞から分泌されるエクソソームに含まれる分子が遠隔転移先の癌微小環境形成などを行うことにより癌転移において重要な役割を果たしている可能性があると考え,研究を行った。 研究実績として,高播種性口腔癌細胞の浸潤・転移とくに遠隔転移形成に関与するエクソソーム由来のmicroRNAとして,2つの候補を挙げられた。その結果,このmicroRNAによって癌細胞浸潤に関与するインテグリンや細胞接着に関与する接着分子(カドヘリンおよびβカテニン)が制御されることが明らかとなった。さらにWnt経路に関与する分子についても変化を認めることが明らかとなり,これについては,臨床検体を用いた免疫組織化学的染色を用いた検討でも立証できた。 また,口腔癌細胞HSC-2, OSC19およびSAS細胞からマトリゲルインベージョンチャンバーを用いて,高浸潤能を持つ亜型としてクローニングされた高浸潤口腔癌細胞(それぞれHSC-2-HI, OSC19-HIおよびSAS-HI)をマウスに導入し,遠隔転移モデルを作製した。最終的に2つのエクソソーム由来microRNA候補について機能解析を行ったが,腫瘍抑制効果以外の機能は見いだせなかった。その後,口腔癌患者の検体として,唾液のサンプリング行ったが,microRNA検出は困難であり,十分量の検体が得られていない可能性が示唆された。今後は,サンプリングの量を増量して行う必要性があると考えられた。
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