研究課題/領域番号 |
18K09541
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
久保 亜抄子 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (70733202)
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研究分担者 |
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 准教授 (20362238)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サテライトグリア / ATP / P2X7 / パッチクランプ |
研究実績の概要 |
1.三叉神経節スライス標本からのパッチクランプ記録 6-10週齢のSprague-Dawley(SD)系雄性ラットから三叉神経節を取り出し、スライス標本を作成した。本三叉神経節スライス標本をIR-DICカメラを装着した正立式微分干渉顕微鏡下にセットして、小径~中径の三叉神経節細胞からパッチクランプ記録を行い、以下の実験に使用した。 2.サテライトグリア細胞の活性化による神経活動性変化の解析 イオンチャネル型ATP受容体であるP2X7受容体作動薬であるBzATPを灌流投与し、神経節細胞からのパッチクランプ記録により、投与前および投与15分後・30分後の神経興奮性パラメータを比較した。対照として、vehicle投与群においても同様に記録を行った。その結果、対照群に対してBzATP投与群では、静止膜電位は投与30分で投与前に比較して有意に浅くなり、基電流は投与15分後から有意に低下したことから、BzATP投与により神経の興奮性が上昇することが示唆された。BzATPは高濃度ではP2X3受容体の作動薬としても機能する可能性があることから、P2X7受容体を予め阻害してBzATPの効果がみられるかどうか検討を行った。P2X7受容体選択的阻害薬であるA740003存在下にてBzATPを投与したところ、基電流および静止膜電位の興奮性変化は起こらなくなった。これらのことからBzATP投与による神経興奮性変化はサテライトグリア細胞を介する経路によるものと考えられた。 3.三叉神経節の免疫組織化学的解析 灌流固定後ラット三叉神経節の凍結切片を作成し、抗P2X7抗体を用いて蛍光免疫染色を行い、P2X7受容体の発現部位を確認した。P2X7受容体は神経節細胞には発現がみられず、神経節細胞を取り囲むような形で蛍光発色がみられたことから、サテライトグリア細胞に発現していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の鍵となるスライス標本からのパッチクランプ記録法が確立できている。今年度はサテライトグリア細胞を活性化させる手段としてATP受容体作動薬を投与して実験を行ったが、投与により神経細胞の興奮性が上がることを電気生理学的に示すことができた。また、光活性化のために必要なアデノ随伴ウィルスの作成も着手しており、サテライトグリア細胞への感染性を確認する実験も始めている。以上のことから研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も交付申請書に記載した「研究目的・研究方法」に沿って研究を推進していく。光活性化のために必要なアデノ随伴ウィルスの選定を行い、サテライトグリア細胞が光操作可能かどうかの検討を行う。アデノ随伴ウィルスの感染力には細胞特異性があるため、数種のウィルスを用いて検討し、最も感染力の高いウィルスベクターを使用する。アデノ随伴ウィルスを導入したラットから取り出した三叉神経節スライス標本からのパッチクランプ記録を行い、光刺激によるサテライトグリア細胞活性化に伴う神経節細胞の興奮性変化をリアルタイムで記録する。さらにプロテインアッセイや免疫組織化学的解析、質量分析等を用いて活性化サテライトグリア細胞から放出される分子の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 設備備品として購入予定だったものが、別の目的で入手した備品で代用可能であったことから予算に余裕が生じた。 (使用計画) 31年度分として請求した助成金と合わせて、神経トレーサーや抗体、光照射用カニューラの購入費用としての使用を計画している。本年度は、実験動物、薬品や実験器具といった消耗品費および国内学会への参加費および旅費に使用する計画をしている。
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