三叉神経節内の非神経細胞であるサテライトグリアが病態下において活性化され、末梢神経の異常興奮を惹起することにより口腔顔面痛が発症する可能性が示されている。この三叉神経節内の非神経細胞と神経節細胞間の機能連関の詳細をあきらかにすることは新たな口腔顔面痛の治療法の確立に繋がると期待されるため、以下の研究を計画し実施した。 1.三叉神経節スライス標本を用いた電気生理学的解析 三叉神経節スライス標本内の神経節細胞からパッチクランプ記録を行った。昨年度から引き続き、サテライトグリアに発現しているATP受容体を化学刺激することで生じる神経節細胞の興奮性変化を解析した。またATP受容体刺激薬とグルタミン酸受容体阻害薬もしくはギャップ結合阻害薬を共存させた場合には、神経節細胞の興奮性変化は抑制された。さらに、サテライトグリア選択的にチャネルロドプシンを発現させた三叉神経節スライス標本に対し青色照射して細胞の電気的変化を記録した。遺伝子導入したサテライトグリアからのパッチクランプ記録では、光照射により内向き電流が確認された。また、遺伝子導入したサテライトグリアに隣接する神経節細胞からパッチクランプを行い光照射すると、内向き電流は見られないが神経節細胞の興奮性が上昇することが確認できた。 2.サテライトグリア初代培養細胞を用いた検討 昨年度までに単離方法を確立したサテライトグリア初代培養細胞を使用し、アデノ随伴ウィルスベクターを用いてチャネルロドプシンを発現させることを試みた。また培養サテライトグリアにATP受容体作動薬を作用させ培養液中のグルタミン酸濃度を測定した。 本研究結果から、神経損傷などに起因するサテライトグリアの活性化により神経節細胞が興奮性変化を示すこと、またその変化にはグルタミン酸とギャップ結合が関与している可能性が示された。
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