研究課題
進行した口腔扁平上皮癌(Oral Squamous Cell Carcinoma: OSCC)は、外科的切除後に高い再発率を示すとともに遠隔臓器へ転移する。集学的治療法の研究が進んでいるが、予後改善には詳細な進展機構の解明と新たな治療法の開発が望まれている。癌細胞が高い増殖・転移能を獲得する過程において、様々な遺伝子の発現が変動する。その原因の1つとして転写制御の破綻が挙げられる。ゲノムDNA上のエンハンサー領域への転写制御因子の動員やヒストン修飾(H3K27acなど)によって近傍の遺伝子の転写が制御される。癌の進展を制御する重要な遺伝子はより強力なエンハンサーの影響下に置かれると思われる。近年ゲノムDNA上で近接してエンハンサー集団が存在することが明らかとなり、スーパーエンハンサーと呼ばれる。本研究の目的はOSCCの増殖・転移に関与する遺伝子の発現を誘導する転写制御領域、スーパーエンハンサーを同定することである。研究初年度はマイクロアレイとTCGA(The Cancer Genome Atlas)のRNA-seqを利用してOSCCの進展に関わる遺伝子の絞り込みを試みた。既に他のグループが報告しているマイクロアレイ GSE74530、GSE59069を最解析し、初期病変と比較して進行病変で発現が変動するmRNAを解析した。このmRNAの発現に基づき、TCGA(The Cancer Genome Atlas)RNA-seqデータに登録されているOSCC 237症例のclusteringを行った。上記のmRNAが発現上昇する傾向があるcluster は、他のclusterよりも予後が悪い傾向が見出され、これらのmRNA発現が患者の予後を規定する可能性が示唆された。
3: やや遅れている
研究初年度に研究代表者が大学内で異動し、新たな実験環境を構築する必要があったためスケジュールに遅れが生じた。
上記のマイクロアレイとTCGA RNA-seqから得られた遺伝子のうち、どれがスーパーエンハンサーによって制御されているのか明らかにする。in vitro実験として、口腔癌細胞株を用いてH3K27acのChIP-seqを行いスーパーエンハンサーも同定する。さらにsiRNAスクリーニングによって解析候補とする遺伝子を絞り込む。
細胞培養実験を予定していたが、実験環境の構築に時間を要したため遂行できず、次年度使用額が生じた.
すべて 2018
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