研究実績の概要 |
本研究課題は、III型インターフェロン(IFN)の一つであるIL-29を臨床応用するための基礎研究を行う事を目的とした。ヒト歯肉由来初代培養上皮細胞(HGK)におけるi)IL-29処理のウイルス核酸受容体発現に及ぼす影響およびii) IL-29前処理のIL-6, IL-8, IFN-beta 発現増強メカニズム、iii) ヒト歯肉上皮組織におけるIL-29受容体発現について解析した。i) IL-29 は濃度依存的に、ウイルス核酸受容体である toll-like receptor 3 (TLR3)およびretinoic acid inducible gene-I(RIG-I)発現を誘導する事を real-time PCR法、western blotting 法により明らかにした。ii) TLR3 agonist であるPoly(I:C) またはRIG-I agonist である3p-hpRNA 刺激により、IL-6, IL-8, IFN-beta産生が誘導される事をreal-time PCR法およびELISA法にて確認した。IL-6およびIL-8などの炎症性サイトカイン産生に、転写因子の一つである nuclear factor-kappa B (NF-kB)が関与する事が知られている。3p-RNA刺激によるNF-kBのリン酸化がIL-29前処理により増強する事を western blotting 法で確認した。同様に、IFN-beta産生に関与する転写因子の一つであるInterferon regulatory factor (IRF) 3も、リン酸化がIL-29前処理により増強した。iii) ヒト歯肉上皮組織において、IL-29受容体であるIL-28Raが遺伝子・タンパクレベルで発現している事を、in situ hybridization法・免疫組織化学染色法により明らかにした。これら結果から、IL-29が口腔粘膜を介するウイルス性疾患に対する予防・治療に臨床応用出来る可能性が示唆され、本研究成果の一部を論文発表した。
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