研究課題/領域番号 |
18K09549
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
熊本 裕行 東北大学, 歯学研究科, 教授 (70215028)
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研究分担者 |
清水 良央 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30302152)
及川 麻理子 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00712902) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯原性腫瘍 / 腫瘍発生 / 細胞分化 / 骨内進展 |
研究実績の概要 |
骨内微小環境下における歯原性上皮の増殖や分化に影響を与えると考えられる、Hippo経路のシグナル分子について免疫組織化学的に検索した。Hippoシグナルははたらきがない場合、伝達経路に動きがなく細胞の活性は負に制御されているが、はたらきかけが起こると、伝達経路下流の共役転写因子であるYAP・TAZをリン酸化し、細胞核から細胞質に移行して分解されることで細胞の活性化を生じることが知られている。
1. 方法:エナメル上皮腫(濾胞型、叢状型)と対照の歯嚢(歯堤上皮)を用い、YAP・TAZの発現・局在について、免疫組織化学により解析した。 2. 結果:YAP・TAZは、正常および腫瘍性の歯原性上皮細胞の核に発現がみられた。これらの発現は、歯堤上皮に比べてエナメル上皮腫で有意に高かった。エナメル上皮腫でのYAP・TAZの発現は、腫瘍胞巣辺縁部の細胞で中央部の細胞に比べて、強い発現が認められた。濾胞型と叢状型での発現に、あきらかな差異はみられなかった。 3. 考察:Hippo経路のシグナル分子が歯原性上皮で確認でき、骨内微小環境における歯原性上皮細胞の増殖や分化に寄与することが示唆された。これらの分子の発現は正常組織に比べ腫瘍組織で高く、病変におけるHippo経路のシグナル伝達の変化が生じていることが示唆され、歯原性上皮の腫瘍化・骨内進展に関わる可能性が示された。今後さらに、これらの組織におけるYAP・TAZのリン酸化の状況についての検討をしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨内微小環境における歯原性上皮の増殖・分化に影響を及ぼすと考えられる因子を検索することができ、また、これらが歯原性上皮の腫瘍化に関わる可能性が示唆され、興味深い結果と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
骨内微小環境での歯原性腫瘍の分化または増殖に影響を与えると考えられる幹細胞関連分子のSox2, Oct3/4や細胞周期関連分子Cdt1, gemininについて、免疫組織化学を主とした検索を進め、ウエスタンブロット法やRT-PCR法での確認も考えている。腫瘍間質に関しては、vimentinおよびα-smooth muscle actinに対する抗体を用いて免疫染色を行い、筋線維芽細胞を同定しその局在および程度について、また、CD68, CD163, CD204に対する抗体を用いて免疫染色を行い、M1・M2マクロファージの同定を行いその局在や比率について検討している。また、腫瘍発生や腫瘍細胞分化に関わる分子のターゲットシークエンスによる網羅的解析についても検討を進めている。これらにより、上皮性歯原性腫瘍の骨内微小環境との相互作用と分化・増殖の転写調節の関連について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調に進展しているが、請求額より若干の剰余金が発生したため、上記の方針で継続する次年度の研究に使用したいと考えている。
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