研究実績の概要 |
これまでに口腔扁平上皮癌の病理組織標本を用いた蛋白質網羅的手法で同定された癌-非癌組織界面部に近接する癌組織に特異的に増加した蛋白質のうち, 口腔扁平上皮癌(SCC) 細胞におけるladinin-1(LAD1) の局在・機能解析を行った. 実験に用いた細胞株 (HSC-2, -3, -4) では, 免疫蛍光法で, 葉状仮足基部のactin arcに沿ってLAD1陽性を認めた. また, siRNA による LAD1 発現抑制細胞では, 葉状仮足・糸状仮足を形成する actin 線維形成が減少し, 細胞縁がruffle な形態を示したことから, LAD1はactin分子の動態の調整に関わる可能性が示唆された. また, LAD1発現抑制細胞は,細胞増殖の抑制を示し, wound-healing assayでは細胞遊走阻害がみられた. 一方で, transwell migration assay では, LAD1抑制細胞の遊走は促進傾向であった. PCR array を用いた細胞遊走関連遺伝子の発現解析では, 複数の細胞遊走関連遺伝子の発現低下傾向がみられた. 細胞遊走に対する LAD1 の関連性については、検討を継続中であるが, 口腔SCC細胞においてLAD1はactin分子制御を介し, 癌細胞の生存, 遊走性に密接に関連する分子であることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
今後, LAD1 ノックアウト細胞を作製し, 異種細胞との混合培養実験を行い, 異種細胞接触状態という生体内に近似した環境での機能解析を行う予定である. また, 最終年度にかけて計画している組織学的検討についても症例選択や免疫組織化学の評価法などの予備的検討を進めていく予定である.
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