研究課題/領域番号 |
18K09556
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
西原 達次 九州歯科大学, 歯学部, 特任教授 (80192251)
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研究分担者 |
有吉 渉 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40405551)
沖永 敏則 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (60582773)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯周病 / 心筋梗塞 / インフラマソーム / ピロトーシス / マクロファージ / 泡沫化 |
研究実績の概要 |
生活習慣病と歯周炎の因果関係が注目されているが、その病態を分子レベルで検証している研究は見られない。そこで、歯周炎において、マクロファージ内に取り込まれた細胞内寄生細菌が、マクロファージの泡沫化とともに、インフラマソームを活性化することを見出し、これらの現象により、心筋梗塞などの生活習慣病が誘発されるという仮説を立て、研究を遂行した。 マクロファージにおける歯周病原性細菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansが誘導するピロトーシスについては、フローサイトメーターを用いた細胞死の解析、炎症性サイトカインの発現など多面的な視点で検証した。その結果、ピロトーシスや炎症性サイトカインの産生において、インフラマソーム複合体の形成を介した複雑な分子機構が関与していることを明らかにした。それに加えて、多価不飽和脂肪酸が歯周病原性細菌が誘導するピロトーシスや炎症性サイトカインの産生に対して抑制的に作用することを見出した。さらに付随研究として、炎症性サイトカインであるIL-17Aが血管内皮細胞やマクロファージ系の細胞に作用して、接着分子の発現やスカベンジャー受容体であるLOX-1を介する泡沫化細胞形成を亢進することにより、アテローム性動脈硬化の病態形成へ関与していることを示唆する結果が得られた。 一方、MEMS を応用した微小流路チップを開発では、このチップに血管内皮細胞をコーティングし、流路実験系の構築に取り組んだ。血栓形成だけでなく、有病者に対する口腔ケアにおいて問題視されている口腔内細菌が誘発する心内膜炎発症モデルにも応用できるような研究モデルの構築化に向けて最適化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究計画として、「歯周病原性細菌侵入マクロファージにおけるピロトーシスおよび泡沫化におけるインフラマソームの関与の解明」と「微小血管流路実験系を使用したピロトーシスが誘導する血管形成因子の探索」の2点に着目して研究を展開した。 「研究実績の概要」に示した通り、歯周病原性細菌であるA. actinomycetemcomitansによるマクロファージへの侵入実験により、ピロトーシスやインフラマソームの誘導に関する詳細な分子メカニズムを明らかにし、これを制御する因子を見出すことができた。さらに、付随研究として、同応答への免疫受容体の関与、泡沫化細胞形成との関連性等、多角的な検討を行い、興味深い研究成果を得ることができた。 一方で、微小血管流路実験系については、実験モデルの開発に向けて、至適条件の模索中であるが、既に血管内皮細胞のコーテイング法は確立し、現在デバイス側の改良を継続して行っている。
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今後の研究の推進方策 |
歯周病原性細菌侵入マクロファージの実験系について、これまでに得られた結果を取りまとめ、英文誌への投稿を行う。また、インフラマソームの形成に関しては、canonical経路、non-canocnical経路の両者について、より詳細な分子メカニズムの解析を行う。さらに、これまでに明らかにされている感染防御に関わる遺伝子を中心に、歯周病原性細菌侵入後の細胞における遺伝子発現をマイクロアレイならびに次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析し、心筋梗塞発症に関与する因子の同定を行う。その成果を踏まえて、将来的には、遺伝子改変マウスの作製に着手し、それぞれのマウスからマクロファージを調製し、様々な生物学的活性の細胞レベルならびに生体レベルの検証を目指す。 微小血管流路実験系については、確立後、このモデルを使用し、集積したプラーク塊に対し、マイクロアレイ・次世代シーケンサーにて、血栓形成に関与する因子の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
インフラマソーム複合体検出に関する試薬の購入費が少なく済んだためである。翌年度の詳細な歯周病原性細菌の侵入に誘導されるピロトーシスおよびインフラマソーム形成に関する詳細な分子機構の解明に必要な試薬購入費として計上する。
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