口腔癌に対する養子免疫療法の開発を目的に、ヒトVγ9Vδ2T細胞に着目してその妥当性を検討した。初めに8種類のヒト口腔癌細胞を用いてVγ9Vδ2T細胞への抗原提示分子であるBTN3A1および、NK受容体に対するリガンドの発現を調べたところ、すべての細胞でBTN3A1とNK受容体に対するリガンドの発現を確認した。このことから、ヒト口腔癌細胞はヒトVγ9Vδ2T細胞の標的となりうることが明らかとなった。次に、窒素含有ビスホスホネートを用いてVγ9Vδ2T細胞の特異抗原であるイソペンテニル二リン酸を口腔癌細胞内に蓄積誘導しVγ9Vδ2T細胞の活性化を検討したところ、すべての口腔癌細胞がVγ9Vδ2T細胞を活性化することが明らかとなった。また同時にVγ9Vδ2T細胞によって8種類のすべての口腔癌細胞株が殺傷されることを確認した。 次にVγ9Vδ2T細胞による口腔癌細胞の傷害活性に、栄養条件の及ぼす影響を検討した。初めに培地に添加する牛血清から脂質を除去した際のVγ9Vδ2T細胞の活性化を評価した。脂質が欠乏した条件では口腔癌細胞のメバロン酸経路の活性化が誘導されることを確認した。また同時にVγ9Vδ2T細胞による口腔癌細胞の傷害活性が脂質欠乏条件で上昇することを確認した。これはVγ9Vδ2T細胞の特異抗原であるイソペンテニル二リン酸がメバロン酸経路の代謝中間体であることから、妥当な結果であると考えられる。次に口腔癌細胞からシクロデキストリンを用いて細胞膜のコレステロールを強制的に取り除いたところ、メバロン酸経路の活性化と、Vγ9Vδ2T細胞の活性化が上昇することを確認した。以上の結果から、Vγ9Vδ2T細胞による口腔癌抑制において脂質を中心とした栄養状態が大きな影響を及ぼす事が明らかとなった。
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