研究課題/領域番号 |
18K09566
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
内田 邦敏 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (20581135)
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研究分担者 |
八田 光世 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (30344518)
吉住 潤子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (40596376)
山崎 純 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50230397)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯周病 / 上皮バリア機能 / TRPチャネル / LPS |
研究実績の概要 |
昨年度作製した、ヒト口腔上皮細胞株並びにPorphyromonas gingivalis(Pg菌)の死菌を用いた3次元培養歯周病モデル(Pg菌(+)群)をもちいて以下の検討を行った。 マイクロアレイ解析により、Pg菌(+)群において細胞増殖に関連する遺伝子群の発現量が上昇し、細胞間接着に関わる遺伝子群の発現量が減少することが示唆された。リアルタイムRT-PCR法を用いて発現変化のあった遺伝子の発現量を検討した結果、細胞周期の進行に中心的な役割を果たすCyclinA1、CyclinA2のmRNA発現レベルは増加傾向を認めた。一方、Cyclinを負に調節する因子であるCdkn1aが有意に低下していた。Tight junctionに関与するOccludinおよびClaudin1のmRNA発現量には有意な差が認められなかった。細胞増殖のマーカーであるKi67陽性細胞数はPg菌(+)群において有意に増加していた。また、E-cadherinの遺伝子発現に変化はみられなかったが、タンパク質発現はPg菌(+)群において有意に低下していた。細胞間接着の機能を経上皮電気抵抗により評価した結果、P.g.菌(+)群で抵抗値が有意に低下した。さらに細胞間隙の透過性をFITC-デキストランを用いて検討した結果、Pg菌(+)群において透過性が有意に亢進していた。Pg菌の作用様式をけんとうするためにPg菌死菌においてもLPSの活性が維持されていることを確認した。また、Pg菌(+)群に対するLPS受容体(TLR4)阻害剤の作用を検討した結果、TLR4阻害薬はPg菌による上皮層の肥厚を改善する傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元培養系モデル並びに歯周病モデルの作製を行い、モデルにおける上皮細胞の機能的変化を明らかにすることができたため。また、本歯周病モデルにおいてTRPチャネル並びにLPS受容体であるTLRの役割を示唆する結果を得られたため、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
OKF細胞の分化並びに細胞間接着に対する各TRPチャネルの活性薬もしくは阻害薬の作用を検討する。また、TRPチャネル発現量の変化をリアルタイムRT-PCR法並びにウエスタンブロット法を用いて検討する。また、遺伝子導入によるTRPチャネル過剰発現、siRNAによるノックダウンによるTRPチャネル発現量の違いと分化並びに細胞間接着の関係を検討することで、TRPチャネルの役割を明らかにする。Pg菌のLPSがTRPチャネル活性に影響を与える可能性をカルシウムイメージング法などを用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
pg菌サンプルを新たに調製したことにより、LPSの関与並びにTLRの役割の検討を今年度に実施したため、次年度使用額が生じた。次年度は、TRPチャネルの関与をより詳細に検討するために遺伝子改変ヒト口腔上皮細胞を作出し、その上皮バリア機能変化を検討する。また、線維芽細胞に発現するTRPチャネルの関与を検討するため、ラット から単離した線維芽細胞にsiRNA処置をすることでノックダウンさせた時のバリア機能変化について検討する。
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