研究課題/領域番号 |
18K09567
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
大野 純 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (10152208)
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研究分担者 |
鍛治屋 浩 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (80177378)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Th1型免疫応答 / 口腔粘膜疾患 / M1マクロファージ / M2マクロファージ / 間葉系幹細胞 / 免疫調節機能 / エフェクター細胞 |
研究実績の概要 |
本年度は免疫調節型・間葉系幹細胞(M2-MSC)の性状解析から行なった。同細胞のM2マクロファージに類似する性状は、サイトカイン・プロファイルおよび細胞表面マーカーの発現により確認した。また、M2-MSCの機能解析については、ナイーブ・マクロファージとのTranswellチャンバーを介した共培養により検討した。その結果、共培養によりナイーブ・マクロファージはM2マクロファージに形質転換することがサイトカイン・プロファイルおよび細胞表面マーカーの発現により明らかとなった。次に、口腔粘膜GVHDから単離した病変部M1マクロファージ(M1-pM)の培養上清をM2-MSCとRaw細胞からM2に誘導したM2-Rawに投与してM2マクロファージとしての性状変化を検索した。M2-MSCではM2性状を強く保持していたのに対して、 M2- RawではM2性状の抑制化がみられ逆にM1性状への添加傾向が示された。この結果は、MSCから誘導した免疫調節型細胞はM1マクロファージからの抑制因子に抵抗性を示すことが示唆された。さらに、M2-MSCのTh1免疫応答への抑制効果を検索するために、M1-Raw細胞とのTranswellチャンバーを介した共培養を試みた。コントロールとしたM2-RawとM1-Rawの共培養では、M1-Raw細胞の増殖活性およびM1性状に変化はみられなかった。しかしながら、M2-MSCとの共培養ではM1-Raw細胞の増殖抑制ならびにM1性状の抑制化が明らかとなった。以上の結果は、MSCから誘導された免疫調節型細胞(M2-MSC)は、in vitroにおいてTh1型免疫応答を抑制する効果を発揮することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、間葉系幹細胞から誘導したM2-MSCがin vitroにおいてTh1型免疫応答を抑制する可能性を示した。この結果は、本研究で提唱している仮説をサポートするものである。しかしながら、本年度は作製されたM2-MSCにより、Th1型口腔粘膜疾患の初期エフェクター細胞であるM1マクロファージの不活性化およびこれらのエフェクター細胞をM2マクロファージへの極性転換を証明するデータは、現時点では不十分である。その原因で一番大きいのは、コロナによる研究時間の制限によるものと考えている。M2-MSCの抑制効果に関するデータは不十分であるため、本年が最終年であったため、この状態で終了させることが出来ない。そこで、十分なデータを得るために期間の延長を申請して、それが承認された。従って、次年度に未解決部分の充足を行う予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で、Th1型免疫応答を抑制する可能性を有するM2-MSC細胞をMSCから誘導作製した。期間の延長が認められ、次年度は、M2-MSCによるM1マクロファージの不活性化およびM2マクロファージへの極性転換を明らかにして、そのメカニズムについて検討する予定である。具体的には、M2-MSCとM1-pMとの共培養により、M1マクロファージからの免疫調節機能・不活性因子の産生の抑制を検索する。これらの実験から、M2-MSCの機能をin vitroにおいて明らかにする。また、動物実験により、M2-MSC投与によるTh1型病変の進行抑制効果を検討する。この2点について解明することにより、免疫調節型MSCの口腔粘膜病変の発症ならびに進行の抑制効果に貢献できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ対策により研究時間が短縮され、計画に基づいた予算執行が行えなかったため。期間延長の申請が受理されたので、繰越金に関しては次年度に全て執行する予定である。
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